陸軍中野学校 (映画)

映画『陸軍中野学校』の概要

『陸軍中野学校』は、1966年に公開された日本映画で、監督は増村保造が務め、主要キャストには市川雷蔵が含まれています。この作品は『陸軍中野学校シリーズ』の第1作目となり、実在のスパイ養成機関を題材にした物語が展開されます。映画の舞台は、戦前から戦中にかけて存在した大日本帝国陸軍の陸軍中野学校。若き将校の三好次郎と、彼を追う恋人・雪子の運命を描きながら、戦争という悲劇を映し出しています。

物語の筋

物語は1938年10月から始まります。連隊に所属する三好次郎陸軍少尉は、草薙中佐と名乗る人物に呼ばれ、厳しい質問攻めに遭います。全てに的確に答えた彼は、1週間後に極秘出頭命令を受け、母と婚約者には出張と誤魔化して九段のバラックに向かいます。彼を含む18人の若手陸軍少尉たちは、草薙の指導の下、普通の士官学校とは異なる優秀なスパイとして育成されることとなります。

この中野学校では、彼らは様々な技術を学びます。柔道や外国語、政治学、航空機の操縦など、多岐にわたる分野の専門家から訓練を受ける中で、さらに諜報術として変装、窃盗術、さらにはダンスや料理、房中術まで教授され、過酷な環境下で自殺者や粛清者を出すまでになるのです。

雪子の役割

その間、三好の女性関係である雪子は、彼を探し続けますが、彼との連絡が途絶えてしまいます。彼女は外資系貿易会社を辞め、参謀本部の暗号班でタイピストとして働くことになります。そんなある日、彼女は元の職場のベントリイに呼ばれる。この男は、「三好は不当な理由で軍法会議にかけられ、銃殺された」と嘘を告げ、軍を止めるために雪子に機密情報の持ち出しを強要するのです。

任務の果たし方

一年の訓練を経て中野学校が卒業を控えていた時、草薙は三好に外交電信暗号のコードブックを入手する任務を与えます。三好は警視庁で勾留中の洋裁師に変装し、酒場で外交官と接触することで任務を遂行しようとします。彼の仲間たちと共に、彼らは領事館内へ忍び込み、見事にコードブックを入手するものの、その情報はすぐに変更されてしまいます。

対立と運命

”中野学校”の生徒たちは情報漏れの可能性を疑い、調査を進める中で三好は勤務中の雪子と偶然にも再会します。そして、彼女がベントリイに機密情報を渡している姿を目撃し、彼女の裏切りを知ってしまいます。これが彼の心に苦悩をもたらし、やがて泥沼のような運命へと引き込まれていくのです。

結末とその後

再会を喜ぶ雪子を三好は誘い、共に過ごす中で彼女を毒殺します。そして、自殺を偽装して逃げることで、恐ろしい結末が訪れます。中野学校の生徒たちの卒業を祝う食事会の夜、三好は再び乗り越えなければならない試練を抱えて汽車に乗り込むのです。彼は雪子の裏切りを心に刻み、未来へ向かって進むことになります。

この作品は、市川雷蔵がそれまでの時代劇から一転し、異なるジャンルでの主演を果たした作品であり、戦争の悲劇をリアルに描写した異色作として多くの観客の心に残りました。

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