陸軍航空隊 (イギリス)

イギリス陸軍航空隊：空からの陸軍支援部隊

イギリス陸軍航空隊（Army Air Corps、AAC）は、イギリス陸軍の航空戦力として、地上部隊を支援する重要な役割を担っています。1942年の創設以来、数々の変遷を経て、現在では5個の作戦連隊、2個の訓練連隊、1個の予備役連隊、そして複数の独立飛行隊・小隊から構成される精鋭部隊へと発展しました。その本拠地は、ハンプシャー州ミドル・ワロップにあります。歩兵や騎兵と同様に、カーネル・イン・チーフや名誉職の連隊長といった伝統的な役職も設置されています。

歴史：気球からヘリコプターへ

イギリス陸軍の航空戦力史は、19世紀の観測気球にまで遡ります。本格的な航空部隊の起源は、1911年に設立された陸軍工兵隊の空中大隊にあります。この大隊はその後拡大、改編を繰り返し、第一次世界大戦では陸軍航空隊として活躍しました。しかし1918年、イギリス海軍航空隊と統合してイギリス空軍が誕生したため、陸軍は独自の航空戦力を一時的に失います。

両大戦間は空軍の協同飛行隊に依存していましたが、第二次世界大戦の勃発により、陸軍は独自の航空戦力の必要性を再認識します。当初、陸軍砲兵隊は空軍の協力を得て航空観測任務に従事していましたが、1942年、チャーチル首相によって陸軍航空隊（AAC）が正式に設立されました。創設当初の部隊はグライダーパイロット連隊、落下傘大隊、航空観測飛行隊などから構成されていました。

第二次世界大戦におけるAACの最も有名な功績の一つに、1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦におけるペガサス橋攻撃があります。グライダーで敵陣に降下したAACの兵士たちは、橋を迅速に確保し、ドイツ軍の反撃を撃退、上陸作戦の成功に大きく貢献しました。その後、AACは1949年に一時的に解隊されましたが、1957年に再編され、現在に至ります。

現代のAAC：多様な任務と高度な機材

現代のAACは、ヘリコプターを主力機材とし、偵察、攻撃、輸送など多様な任務を遂行しています。1970年代以降、陸軍の各旅団には少なくとも一つの飛行部隊が配備されており、主力ヘリコプターはスカウト、スー、そしてその後リンクス、アパッチへと進化しました。固定翼機も運用されており、観測、連絡、輸送任務に使用されています。

近年では、アフガニスタンでの国際治安支援部隊への参加、そしてイギリス空軍との連携による監視任務など、国際舞台でも重要な役割を果たしています。AACは、アパッチ攻撃ヘリコプターなど高度な機材を導入し、常に最新の技術を取り入れながら能力向上に努めています。

組織：連隊と飛行隊

AACは連隊を基本単位としており、各作戦部隊と予備役連隊は、統合ヘリコプターコマンドや第16空中強襲旅団戦闘団などに配属され、作戦に従事しています。複数の独立飛行隊や飛行小隊も存在し、特殊部隊との連携など、多様な任務に対応できる体制を整えています。また、AAC音楽隊やヘリコプター展示飛行チーム「ブルー・イーグルス」なども存在し、広報活動などにも貢献しています。

運用機材：多様な航空機

AACは、アパッチ攻撃ヘリコプター、リンクス、ガゼルといったヘリコプターのほか、アイランダーやディフェンダーなどの固定翼機、そして訓練用の機材など、多様な航空機を運用しています。これら機材は、それぞれの任務に最適化されており、AACの高い作戦能力を支えています。

戦闘功績：数々の栄誉

AACは、イギリス軍における「戦闘兵科」として認められており、数々の栄誉あるバトル・オナーズを授与されています。フォークランド紛争、湾岸戦争、イラク戦争など、様々な作戦での活躍が評価されています。ノルマンディー上陸作戦、ペガサス橋攻撃など、歴史的な作戦での貢献も高く評価されています。

AACは、イギリス陸軍にとってなくてはならない重要な戦力であり、今後も地上部隊を支援し、イギリスの安全保障に貢献していくでしょう。

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