陽は舞いおどる甲子園

陽は舞いおどる甲子園

『陽は舞いおどる甲子園』は、1934年に制定された選抜中等学校野球大会、現在の選抜高等学校野球大会の第2代大会歌として知られています。正式な名称は「全国選抜中等学校野球大会歌」であり、戦後に学制改革に伴って「選抜高等学校野球大会歌」と改題されました。

この楽曲の作詞は、大阪毎日新聞社の学芸部部長であった詩人の薄田泣菫によって行われ、作曲は陸軍戸山学校の軍楽隊によって手がけられました。なお、当時の風潮として、軍楽隊や東京音楽学校の著作権保持者の名前が伏せられることが多くなり、作曲者は大沼哲だと後に特定されています。

実はこの大会歌が制定される前の1931年には、第8回大会で初代大会歌「蒼空高き甲子園」が使用されていました。この楽曲は、時代小説「丹下左膳」の著者である長谷川海太郎が作詞を担当し、陸軍戸山学校軍楽隊が作曲しました。しかし、その歌詞に含まれる英語が当時の陸軍上層部の反感を買い、わずか1年で廃止されるという、波乱の経歴を持っています。

新たに制定された『陽は舞いおどる甲子園』は、1934年から4大会連続で開会式の入場行進曲として演奏され、毎日放送のセンバツ中継でもテーマ曲として使用されるなど、非常に重要な役割を果たしました。しかし、1962年から流行音楽が入場行進曲に取って代わるようになり、その知名度は相対的に低下していきます。

また、歌詞には「長棍痛打して」や「戦塵あがる」といった当時にはそぐわない言葉が含まれているため、その影響で世間に浸透しづらかったという側面もあります。さらに、毎日という言葉が歌詞に含まれているため、NHKのテレビ中継では歌詞の字幕が表示されないことがあり、これも広く知られない要因の一つとなってしまいました。結果として、この楽曲は1992年の第64回大会を最後に姿を消し、翌年からは新たな大会歌「今ありて」が採用されることとなります。

2008年には、第80回記念大会を祝うメモリアルイベントで、この大会歌が16年ぶりに甲子園球場で演奏されました。この出来事は、多くの高校野球ファンにとって、かつての情熱を思い起こさせる瞬間となったことでしょう。

歌詞と旋律は著作権の保護期間が満了しており、パブリックドメインとして利用可能です。また、1943年に大会の題号が「毎日新聞」へと統一されたため、その後の大会からは歌詞の一部も改編されています。『陽は舞いおどる甲子園』は、野球だけでなく、時代の流れをも感じさせる文化遺産として、たくさんの人々に親しまれています。

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