隠州視聴合紀

『隠州視聴合紀』について

『隠州視聴合紀（いん・おんしゅうしちょうがっき）』は、江戸時代の寛文7年（1667年）に編纂された隠岐国の地誌で、全4巻を有し、地図が1葉付属しています。この書物は隠岐島についての最古の地誌とされ、原本は不明ですが、後世に残された写本がいくつか存在しています。そのため、著者は特定されていないものの、資料としての価値は非常に高いとされています。

成立と著者について

成立の過程は、序文に記された内容から確認されます。寛文7年の秋に著者が隠岐島を巡覧し、地元の人々や古社寺から耳にしたことを基に書き記したと言います。この「命を奉じて隠州に到る」という表現から、当時の幕府の命令で訪問した可能性が伺えます。著者としては、松江藩の藩士である斎藤勘介が有力視されています。

内容の概要

『隠州視聴合紀』は、地元の人々の知識や容易にアクセスできない地域の情報をまとめ、地勢や人口、名勝などの情報を紀行文風に展開しています。特に地名やそれらの距離に関する記載は、その後の地図作成などに大いに参考にされています。内容は序文、本文、末尾の部分で構成され、それぞれが異なる役割を果たしています。

巻の構成

• - 巻の一には、序文と「国代記」が含まれ、隠岐島の歴史が語られています。この中には、源義親が隠岐を領有して以降の出来事が記されています。

• - 巻の二と三では、それぞれ周吉郡や穏地郡の地理的な情報が詳細に描かれています。特に古い地名と現在の地名を対比させることで、地理の変遷が明らかにされます。

• - 巻の四では、島前の地域や社寺一覧、著名なスポットにまつわる和歌、さらに「焼火山縁起」や「文覚論」が記載されています。特に神社に関する考察が詳細で、仏に対してやや厳しい立場を取るものの、偏見なく記されています。

竹島と鬱陵島への言及

この地誌は隠岐国の地理的な情報だけでなく、竹島と鬱陵島に関する記述も含んでいます。これらの情報は現在の領土問題とも関連しており、当時の幕府が双方の島に対する認識や取り扱いについて書かれています。特に江戸時代初期における商人的な活動による影響が反映されています。

韓国がこのテキストを引き合いに出して現在の領土を主張することがあることからも、歴史的・地理的な文献としての重要性が際立っています。『隠州視聴合紀』は、現代においても貴重な歴史的資源として評価されています。

結論

『隠州視聴合紀』は、その時代に生きる人々の知恵や文化を垣間見ることができる重要な資料です。地名や地理的情報が詳述されており、隠岐島の歴史や文化を理解する上で欠かせない一冊です。現存する写本を通じてさまざまな発見が期待されるこの書物は、今後も研究や評価が続けられることでしょう。

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