隻腕

隻腕とは

隻腕（せきわん）とは、一方の腕を失った身体的障害の状態を指します。この言葉は、失った部分の範囲によって異なる状態を包含しており、手首だけの喪失から、肩まで全てを失った場合にまで当てはまります。特に、肘関節の有無によって、障害の程度が大きく変わるため、一口に隻腕という表現では不十分なことがあります。片腕の表現も存在しますが、こちらは差別的なニュアンスを持つため、隻腕または「片方の腕」という表現が推奨されます。

隻腕の「隻」という言葉は、お互いに対になっている物の片方を数える際に使う助数詞です。

隻腕の原因

隻腕になる原因は様々です。代表的なものには、病気や事故があります。加えて、サリドマイドのような薬剤の副作用が、母親が妊娠中に服用したことから胎児に影響を与え、隻腕を引き起こすケースも見られます。しかし、多くの場合、戦争が原因となることが多く、ネルソン提督や歴史上で知られる兵士たちも戦闘中に腕を失っています。指揮官であった彼らは、身体の欠損が必ずしも戦闘能力を大きく損なうことはないため、戦線に留まることができた場合もあります。さらに、戦争で障害を負った兵士には国家からの手当てが支給されることもあります。

中東などの地域では、身体的な罰として四肢の切断が行われることがあり、窃盗に対しては手首から先が切断されることがあるのが現状です。

隻腕の形状と苦痛

隻腕には様々な形態があり、肩からの離断、上腕の切断、肘からの切断、前腕の切断などがあります。肩に近い位置での切断ほど、その後の行動が制限されることになります。例えば、前腕が残っている場合、物を持つ動作はできる反面、上腕が失われるとその能力は大きく制限されます。また、肩での切断となると、腕に関する機能がほぼ喪失してしまい、職業上も大きな影響が出ることになります。

興味深いことに、隻腕であっても、存在しない腕の感覚を持つことがあり、これを幻肢という症状と言います。時には幻肢痛を伴うこともあり、その理由は明確ではありません。しかし、義肢の装着やリハビリにおいて、幻肢の感覚を利用することができるため、その有無はその後の回復に影響を及ぼすことがあります。

義肢と社会的活動

腕を失うと、社会での活動には相当なハンディキャップが生じ、労働能力が大幅に低下します。そのため、障害年金が支給される対象となり得ます。日本の国民年金法では、片方の腕を失った者は2級に該当し、年間792,100円の支給を受けることが可能です。

スポーツにおいても、隻腕の人が健常者と同様に競技を行うことは非常に難しいため、パラリンピックなどの特に障害者を対象とした大会がその機会を提供しています。しかし、ピート・グレイやジム・アボットのように、隻腕という困難を乗り越え、素晴らしい成果を上げた例も存在します。

神話や文化における隻腕

歴史的には、「身体障害者には特別な力が宿る」とされることがあり、隻腕の神々の伝承も存在します。北欧神話のテュールやケルトのヌァザなどがその一例です。彼らは、それぞれ右手を失うことで、力を喪失したと考えられていました。

映像作品における隻腕

隻腕は非常に視覚的な特徴であり、多くの映像作品で個性の一部として扱われがちです。金庸の武侠小説『神鵰剣侠』の主人公・楊過や、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード|マッドマックス_怒りのデス・ロード』に登場する隻腕の女戦士・フュリオサのようなキャラクターは、多くの人々に強い印象を与えます。

このように、隻腕は社会的、文化的な側面から多岐にわたる重要な意味を持ち、さまざまな分野で人々に影響を及ぼし続けています。

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