隼ちゃん事件

隼ちゃん事件とは

1997年11月28日、東京都世田谷区で発生した交通事故死亡事件です。当時8歳だった小学2年生の男児が、青信号で横断歩道を渡っていた際、渋滞で停止していたダンプカーに轢かれて亡くなりました。

事件の概要

事故当時、ダンプカーの運転手は32歳で、業務上過失致死罪と道路交通法違反（ひき逃げ）の容疑で現行犯逮捕されました。しかし、逮捕から約1ヶ月後の12月28日、検察は運転手を嫌疑不十分として不起訴処分としました。

この不起訴処分を遺族が知ったのは後日のことで、検察に問い合わせたものの、当時の刑事訴訟法では、処分内容や理由の通知は告訴人や告発人に限られており、被害者や遺族への通知義務はないとされました。そのため、東京地検は遺族に対し、「処分理由を教える義務はない」と回答しました。この検察の対応は、報道を通じて広く社会に知られることとなり、国会でも問題として取り上げられました。

1998年5月、遺族は東京第二検察審査会に審査を請求しました。また、遺族による目撃者探しによって新たな証言が得られたことから、ダンプカーの運転手は業務上過失致死罪で在宅起訴されることになりました。ただし、ひき逃げ容疑については「事故に気づいていながら逃走したとは認められない」として、不起訴となりました。

東京地検は運転手に対し禁錮2年を求刑し、東京地裁は禁錮2年執行猶予4年の判決を言い渡しました。さらに遺族は、運転手と会社に対し民事訴訟を起こし、裁判所は「被害者に過失は一切認められない。運転手の一方的な過失」と認定し、総額3200万円の支払いを命じました。

事件がもたらした影響

この事件を契機として、検察の対応が大きく見直されることになりました。特に、被害者や遺族に事件の処分結果を知らせる「被害者等通知制度」が導入されるきっかけとなりました。この制度は、被害者が事件の真相を知り、適切な救済を受けるための重要な一歩となりました。

その他の出来事

事件後、被害者の写真がインターネット上に無断で投稿されるという事態が発生しました。この投稿者は著作権法違反で起訴され、2007年7月に懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決を受けました。

参考文献

片山徒有「隼までとどけ七通の手紙」（河出書房新社）ISBN 978-4309013206
毎日新聞社会部取材班「隼君は8歳だった ある交通事故死」（毎日新聞社）ISBN 978-4620313122

関連項目

検察官
被害者

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