雁金山城

雁金山城（かりがねやまじょう）は、現在の鳥取県鳥取市湯所町に所在した日本の山城です。鳥取城が築かれた久松山から続く尾根上の丘陵に位置し、本城である鳥取城を支える出城として構築されました。

特に天正9年（1581年）に羽柴秀吉による鳥取城包囲戦が展開される中で、毛利方にとって兵糧輸送を担う極めて重要な拠点として機能しました。

地理と構造

雁金山城は標高約140メートルほどの丘陵頂部に位置しています。頂部には、防御のために周囲に土塁や空堀が巡らされた主郭が置かれていました。

地理的には、鳥取城が位置する久松山の南側に連なる尾根上にあり、さらに北西に位置する丸山城と鳥取城の中間にあたります。毛利氏が日本海側の丸山城へ運び入れた兵糧や物資を中継し、山間部を通って鳥取城へ送り届けるという、兵站上の生命線ともいえる役割を担っていました。

歴史

雁金山城は、天正9年（1581年）に鳥取城の城番を務めていた吉川経家によって築かれたとされています。丸山城から鳥取城への兵糧輸送ルートにおける中継点として、その重要性が認識されていました。

秀吉の鳥取城攻勢が本格化すると、毛利方の城将として塩冶高清が入城し、この兵糧輸送路の維持に備えました。しかし、羽柴方の武将である宮部継潤による攻撃を受け、雁金山城は落城してしまいます。替わって宮部継潤がこの城に入り、管理することとなりました。

雁金山城が秀吉方の手に落ちたことは、戦況に決定的な影響を与えました。丸山城と鳥取城を結ぶ兵糧輸送の連絡線はこれにより完全に断ち切られ、鳥取城は孤立を深めることになります。既に早期から食糧不足に苦しんでいた鳥取城にとって、これはさらなる打撃となり、城の開城を早める大きな要因の一つとなりました。

落城後の展開

雁金山城を失った城将・塩冶高清は、奈佐日本之介らが籠城していた丸山城へ退き、そこで共に羽柴軍と抗戦しました。しかし、鳥取城内で兵士たちが飢えと疲労に苦しむ状況を見かねた吉川経家が、遂に鳥取城の開城を申し入れたため、丸山城もまた開城を余儀なくされました。

丸山城を守った奈佐日本之介、塩冶高清、佐々木氏らは、吉川経家から再三にわたり助命の嘆願がなされていましたが、羽柴秀吉の命令により、周辺地域を荒らした海賊、山賊であるとして罪を着せられ、切腹を命じられてその生涯を終えました。現在、丸山城の西側の山麓には、自刃した城将たちを祀る石碑が建立されています。

現在の状況と新たな発見

現在、鳥取市内において平和塔が建つ山が「雁金山」と呼ばれることがありますが、これは史実の雁金山城が所在した場所とは異なります。平和塔のある山には、毛利軍が築いた別の砦があり、そちらは「天徳寺山の砦」と呼ばれています。塩冶高清が守備した史実の雁金山城は、この平和塔のある山の北西に位置しています。

雁金山城は、前述の通り、鳥取城への攻撃に備える毛利軍の重要拠点の一つとして築かれました。しかし、近年実施された実地調査によって、新たな事実が明らかになっています。雁金山城の主郭周囲には、本城たる鳥取城側へ向かって構築されたとみられる、比較的大規模な土塁が存在することが確認されました。

これは、城を攻略した宮部継潤が、自らの防備を固めるとともに、鳥取城の孤立をより徹底し、早期の開城を促す目的で、雁金山城を改修して築かせた遺構である可能性が指摘されており、鳥取城攻防戦における雁金山城の戦略的な重要性を示すものとして注目されています。

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