雄山荘

雄山荘（ゆうざんそう）

雄山荘、または大雄山荘は、かつて神奈川県小田原市下曽我に存在した別荘です。昭和初期に建てられ、その歴史の中で様々な人々に利用されました。

概要

雄山荘は、1930年（昭和5年）の春に、東京の印刷会社社長であった加来金升によって、主に接客用として建築されました。贅を凝らした造りは、当時の富裕層の社交の場として利用されていたことを物語ります。

太宰治と太田静子

太平洋戦争中、作家・太宰治の愛人であった太田静子は、親類の縁を頼り、実母と共にこの雄山荘に疎開しました。静子が雄山荘で過ごした日々を綴った日記は、後に太宰治の代表作の一つとなる小説『斜陽』の着想の源となりました。

1947年（昭和21年）2月21日、太宰治自身も雄山荘を訪れ、24日まで滞在しました。この短い滞在期間中に、静子は後の作家となる太田治子を身ごもったとされています。雄山荘は、太宰治とその周辺の人々にとって、重要な場所であったと言えるでしょう。

その後

1951年（昭和26年）に太田静子が雄山荘を去った後、俳人の林周平が最後の借主となりました。林周平は1993年頃まで居住していましたが、その後、雄山荘は無人の状態となりました。

太宰治のファンを中心に、約4,000人もの署名が集められ、小田原市に対して雄山荘の買い取りと保存を求める運動が起こりました。しかし、当時の所有者に売却の意思がなく、また、建物自体の老朽化が著しかったため、その願いは叶いませんでした。

焼失

2009年（平成21年）12月26日の早朝、原因不明の出火により、雄山荘は全焼しました。小田原警察署は、不審火の可能性もあると見て捜査を行いましたが、真相は解明されていません。かつて多くの人々が集い、文学作品の舞台ともなった雄山荘は、その姿を完全に失ってしまいました。

現在、雄山荘があった場所には、その面影を偲ぶものは何も残っていません。しかし、雄山荘が文学史に残した足跡は、人々の記憶の中に生き続けています。

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