集塵装置

集塵装置：大気環境を守る技術

集塵装置は、工場や施設から排出される気体に含まれる煤や粉塵などの粒子状物質を分離し、大気汚染を防止するための重要な装置です。また、有価物を回収する目的でも利用され、資源の有効活用にも貢献します。クリーンルーム内の異物除去にも使用され、その際は集塵機と呼ばれることもあります。

集塵の原理

集塵装置は、気体と粒子の運動特性の違いを利用して粒子を分離します。この運動差を大きくすることが、集塵技術の基本的な考え方です。

外力の利用: 重力、遠心力、静電気力（クーロン力）などの外力を利用し、気流と直交する方向に粒子を移動させます。
障害物の利用: 気流の通り道に障害物を設置し、気流を迂回させることで、慣性により粒子を障害物に衝突させたり、拡散させたりします。
隔壁の利用: 粒子の直径と同程度の孔径を持つフィルターを設置し、物理的に大きな粒子を捕捉します。

集塵装置の種類

集塵装置は、粒子の分離方法によって大きく以下の3種類に分類できます。

1. 流通式集塵装置: 重力、遠心力、静電気力などの外力を利用して粒子を分離します。

重力式集塵装置: 水平に設けられた空間で、粒子の重力による沈降を利用します。比較的大きな粒子の除去に適しており、他の集塵装置の前処理として使用されることが多いです。
遠心力式集塵装置: サイクロン式粉体分離器が代表的です。らせん状の気流を作り、遠心力で粒子を分離します。構造が簡単で維持管理が容易なため、広く利用されています。ただし、大型化すると集塵効率が低下するため、大量の気流を処理する場合は、複数の小型サイクロンを並列に配置したマルチサイクロンが用いられます。
電気集塵機: 静電気の力を利用して粒子を分離します。放電極で粒子を帯電させ、集塵極に引き寄せて捕捉します。圧力損失が小さく、大量の気体を処理できるため、火力発電所などで広く使用されています。ただし、爆発性の気体や可燃性の粒子には適していません。

2. 障害物式集塵装置: 気流の流路に障害物を設け、粒子の慣性や拡散を利用して分離します。

慣性力集塵装置: 障害物に粒子を衝突させる方式や、気流を急激に方向転換させる方式があります。他の高性能な集塵装置の前処理として導入されることが多いです。
深層ろ過式集塵装置: エアフィルタや粒子充填層を通して粒子を捕捉します。HEPAフィルタやULPAフィルタは、クリーンルームなど高度な清浄度が要求される環境で使用されます。粒子充填層フィルタは、摩耗性の粒子や高温の気体にも対応可能です。
湿式集塵装置: 液体を使用して粒子を捕捉します。

3. 隔壁式集塵装置: フィルターなどの隔壁を用いて粒子を分離します。

バグフィルタ: 布や不織布製の袋状フィルター（バグフィルタ）に気流を通し、粒子をろ過します。微粒子の除去に優れており、高い集塵率が得られます。フィルターに堆積した粒子は、定期的に払い落とす必要があります。粉塵爆発の危険性がある場合は、前処理や不活性粉末の混入、帯電防止ろ材の使用などの対策が必要です。マグネシウムやアルミニウムの粉末など、安全な処理が困難な粒子は湿式集塵装置で処理されます。

集塵率

集塵装置の性能を表す指標として、集塵率があります。総合集塵率は、集塵装置の入口と出口の粒子流量または粒子濃度から算出されます。また、粒子径ごとの集塵率を示す部分集塵率も、装置の性能評価に重要な指標となります。

集塵装置の選択にあたっては、処理する気体の種類、粒子の性質、要求される集塵率などを考慮し、最適な方式を選定する必要があります。適切な集塵装置の導入と維持管理は、大気環境の保全と作業環境の改善に大きく貢献します。

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