雑種第一代

雑種第一代（F1ハイブリッド）とは

雑種第一代（F1 hybrid）とは、生物学において、遺伝的に異なる2つの系統を交配させることによって得られる、第一世代目の子孫のことです。F1と略されることもあり、F1品種とも呼ばれます。

F1品種の特徴

遺伝子型: 親世代の2系統は、特定の遺伝子座において異なる対立遺伝子をホモで持っていることが多いです。F1世代は、両親からそれぞれの遺伝子を受け継ぎ、ヘテロ接合体となります。そのため、F1世代の遺伝子型は均一になります。
雑種強勢: F1世代が、両親よりも生育、生存力、繁殖力、生産性などの点で優れた形質を示すことがあります。この現象は雑種強勢（ヘテローシス）と呼ばれます。逆に、F1世代の形質が両親よりも劣る場合は、雑種弱勢と呼ばれます。
一代限り: F1品種は、その世代に限って安定した収量が得られる品種として知られています。これは、F1世代の種子を採取して育てても、次の世代では同じ性質を持つ作物が育たないためです。そのため、農家は毎年F1品種の種子を購入する必要があります。

農業への応用

雑種強勢を利用して、より有用な形質を伸ばすように品種改良されたものが、一代雑種や一代交配種です。これらは、家畜や農産物の品種改良に広く応用されています。例えば、野菜の大きさや形が揃い、収穫までの時間が短くなるなど、大量出荷に適したメリットがあります。

F1品種の現状

多くの種苗会社がF1品種の開発に力を入れています。現在、日本で流通している市販野菜のほとんどがF1品種であると言われています。しかし、F1品種の野菜は、化学肥料や農薬を使うことを前提に品種改良されていることが多いという指摘もあります。

動物におけるF1

動物の場合、F1は、ロバとウマの交配によるラバのように、2つの密接に関連する種または亜種の交配を指すことがあります。

雑種第二代（F2）

F1個体間の交配、または自家受粉によって生じた子孫は、雑種第二代（F2）と呼ばれます。

参考文献

石川統ほか 編『生物学辞典』東京化学同人、2010年。ISBN 978-4807907359。
R. C. King, W. D. Stansfield 著、西郷薫・佐野弓子・布山喜章 監訳 編『遺伝学用語辞典』（第6版）東京化学同人、2005年。ISBN 978-4-8079-0629-1。
緒方宣邦・野島博『遺伝子工学キーワードブック』（第2版）羊土社、2000年。ISBN 978-4897066370。

関連項目

メンデルの法則
戻し交配
* 品種改良

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