難波津

難波津：古代大阪の繁栄を支えた港湾施設

難波津は、古代の大阪湾に存在したとされる港湾施設です。現在の大阪市中央区付近にあったと推測されていますが、2024年現在、具体的な遺構は発見されていません。日本書紀にもその存在が記されており、古代日本の歴史において重要な役割を果たした港湾として知られています。

河内湾から難波津の誕生

縄文時代の海岸線は、現在の東大阪市付近まで入り込んでいた河内湾と呼ばれる湾でした。この湾の入り口を塞ぐように存在したのが上町台地です。その後、河内湾は土砂の堆積によっていくつかの砂州に分かれ、やがて「草香江」と呼ばれる湖へと変化しました。

人々は、瀬戸内海と草香江（河内湖）を結ぶ水路の必要性を感じ、運河を掘削しました。これが難波堀江です。この堀江の途中にできた潟湖、そして河内湖最奥部の草香津港と並んで、難波津は重要な港湾施設として機能しました。上町台地先端部からは、16棟もの倉庫群の遺構も発見されており、難波津の規模の大きさを物語っています。文献には「難波館」と呼ばれる商館の存在も記されていますが、こちらも未発見です。

難波宮と難波津

大化の改新後、難波高津宮、そして難波長柄豊碕宮（前期難波宮）が建設され、一時的に都が置かれました。しかし、都はその後明日香、そして平城京へと移り、難波宮は焼失と再建を繰り返しました。奈良時代には聖武天皇が一時的に都を置いた後期難波宮も存在しました。

難波津の衰退と新たな港湾

8世紀に入ると、難波津は土砂の堆積によって機能を失い始めます。大型船の停泊が困難になり、762年には遣唐使船が難波津で動けなくなる事件も発生しました。この問題を解決するため、淀川と三国川を結ぶ工事が行われ、785年に完成しました。長岡京への遷都、そして難波宮の廃止も、難波津の衰退と関連していると考えられています。

しかし、平安時代に入っても難波津に関する記録は残っており、完全に消滅したわけではありませんでした。難波堀川の草木の伐採など、港湾維持のための努力も続けられていたことがわかります。また、多くの歌にも詠まれており、人々の生活に深く関わっていたことが伺えます。

難波津の位置をめぐる論争

難波津の正確な位置については、現在も議論が続いています。有力な説として、中央区三津寺町付近とする説と、中央区高麗橋付近とする説があります。高麗橋付近説は、考古学的にも裏付けられており、近年では有力視されています。

難波津のその後と新たな解釈

平安京遷都後、首都と瀬戸内海航路を結ぶ役割は淀川流域に移り、難波津の重要性は相対的に低下しました。「難波」という地名は広く使われていたため、平安時代には別の港湾が「難波津」と呼ばれていた可能性も指摘されています。

まとめ

難波津は、古代日本の経済と文化において重要な役割を果たした港湾施設でした。その歴史、位置、そして衰退の過程は、古代日本の社会構造や交通事情を知る上で重要な手がかりとなります。現在でもその全貌は解明されておらず、今後の研究に期待がかかります。

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