雨の賛美歌

雨の賛美歌

「雨の賛美歌」（あめのさんびか）は、日本のグループサウンズ、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが1971年（昭和46年）1月10日に発表したシングル楽曲である。作詞はなかにし礼、作曲は井上忠夫が手掛け、編曲は森岡賢一郎が担当した。本楽曲は、グループが「さよならのあとで」などのヒットで示した歌謡曲寄りの路線から、かつてのグループ・サウンズ（GS）期におけるサウンドへの回帰を試みた作品として位置づけられる。

楽曲の特色

この楽曲の最大の特色は、エレキギターを前面に押し出したサウンドにある。グループが得意としたロック色の強い演奏が再びクローズアップされたのである。当時のブルー・コメッツは歌謡曲チャートで成功を収め、幅広い層にアプローチしていた時期だが、「雨の賛美歌」ではその流れとは一線を画し、初期のファンや新たな音楽性を求める試みとして、エッジの効いたサウンドを展開した。

歌詞は、なかにし礼によるもので、ヨーロッパの風景や雰囲気を連想させる、叙情的でドラマティックな世界観を描く。これは多くのGS楽曲に見られた手法であり、サウンド面での回帰と相まって、グループの初期世界観を1971年当時のサウンドで表現しようとする意図が感じられる。井上忠夫によるメロディーは美しく、ロック的な力強さも内包する。森岡賢一郎による編曲は、エレキギターの響きを効果的に用い、楽曲の哀愁や壮大さを引き立てる。

商業的成績

発表当時、「雨の賛美歌」は商業的には大きな成功を収めるに至らなかった。オリコンチャートでの最高順位は65位、レコードセールスも3万枚未満と記録されている。これは、先行の歌謡曲路線のヒットと比較すると低調な結果であった。GSブーム終焉後の市場において、再びロック色の強いサウンドを打ち出したことが、必ずしも広く受け入れられなかった可能性が指摘される。楽曲の独特な雰囲気や一般的な歌謡曲とは異なるアプローチも、大衆への浸透を妨げた一因となり得た。

B面収録曲「運命だから」

シングルのB面には「運命だから」が収められている。作詞はなかにし礼、編曲は森岡賢一郎、作曲は小田啓義が担当した。この楽曲はA面とは異なり、より歌謡曲的な雰囲気が強い作品である。叙情的なメロディーとアレンジが特徴で、A面が示すGSサウンドへの回帰とは対照的に、グループが同時期に進めていた歌謡曲路線の一端を示す楽曲と言える。シングル盤の中で異なる音楽性を提示する点は、当時の多様な音楽的試みを反映する。

現在のライブ活動での扱い

「雨の賛美歌」は、商業的な成功には至らなかったが、グループの歴史における重要な楽曲の一つである。2000年代以降に行われている、オリジナルメンバーによるジャッキー吉川とブルー・コメッツの再結成ライブでは、この「雨の賛美歌」も重要なレパートリーとして選ばれ、披露されている。これは、楽曲が持つ芸術性や、グループの音楽的多様性を示す作品としての価値が再評価されていることを示唆する。ライブ演奏を通じて、楽曲の魅力が現在に伝えられている。

結び

「雨の賛美歌」は、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが1971年に発表した、エレキギターをフィーチャーしたGSサウンド回帰的な楽曲である。商業的には振るわなかったものの、グループの音楽性の幅広さを示す作品であり、現在もライブで演奏されるなど、その価値は損なわれていない。なかにし礼によるヨーロッパ的な歌詞世界と、井上忠夫によるメロディー、森岡賢一郎による編曲が独自の魅力を生み出す。B面「運命だから」と共に、当時の多様な音楽的挑戦を示すシングルである。

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