雨倉孝之

雨倉孝之（あめくら こうじ）は、1928年11月3日に東京府（現在の東京都）で生まれ、2015年7月16日に生涯を閉じました。彼は日本の海軍史、特に海軍制度史を専門とする歴史家であり、その研究は海事史の分野にも及びました。

雨倉は、1945年4月に高等商船学校東京分校（機関科）に入学しましたが、同時に海軍機関術予備練習生に任命されました。しかし、同年8月の終戦により、学校を退学し、予備練習生の任も解かれました。この経験は、後の彼の研究活動に大きな影響を与えたと考えられます。

戦後、雨倉は東京理科大学理学部を卒業し、日本国有鉄道（国鉄）に勤務しました。国鉄では、長年にわたりその職務を全うし、1984年に退職しました。その後、本格的に海軍史の研究に取り組み、多くの著作を発表しました。

彼の著作は、海軍の組織構造、制度、そしてそこで働く人々の姿を詳細に描き出しています。特に、旧日本海軍の将校や下士官、兵士の役割や人物像に焦点を当てた作品が多く、海軍の内部事情を理解する上で貴重な資料となっています。

主な著作

雨倉の著作は、単著と共著、訳書に分けることができます。単著では、海軍の組織や制度を詳細に解説した作品が多く、特に「海軍～軍制物語」シリーズは、その代表作と言えるでしょう。

『海軍ジョンベラ軍制物語』（光人社、1989年/新装版、1997年）
『海軍オフィサー軍制物語』（光人社、1991年/新装版、1997年）
『陣頭指揮 17人の飛行隊長が語る勝者の条件』（光人社、1996年）
『海軍アドミラル軍制物語』（光人社、1997年）
『海軍フリート物語 連合艦隊ものしり軍制学』上・下（光人社、1998年）
『飛行隊長が語る勝者の条件 最前線指揮官たちの太平洋戦争』（光人社NF文庫、1999年）
『海軍航空の基礎知識』（光人社NF文庫、2003年）
『帝国海軍士官入門 ネーバル・オフィサー徹底研究』（光人社NF文庫、2007年）
『帝国海軍下士官兵入門 ジョンベラ気質徹底研究』（光人社NF文庫、2007年）
『海軍護衛艦(コンボイ)物語』（光人社、2009年）
『海軍航空の基礎知識 ネイバル・エビエーションものしり物語』（光人社NF文庫、2009年）
『帝国海軍将官入門 栄光のアドミラル徹底研究』（光人社NF文庫、2015年）

これらの単著の中には、『海軍ジョンベラ軍制物語』が『帝国海軍下士官兵入門 ジョンベラ気質徹底研究』として、『海軍オフィサー軍制物語』が『帝国海軍士官入門 ネーバル・オフィサー徹底研究』として、『海軍アドミラル軍制物語』が『帝国海軍将官入門 栄光のアドミラル徹底研究』として、それぞれ改題され文庫版として再出版されているものもあります。

共著としては、江田島海軍兵学校に関する書籍に参加しており、海軍教育にも関心を寄せていたことが伺えます。

（平間洋一・市来俊男・影山好一郎・北澤法隆・齋藤義朗・中村悌次・左近允尚敏・長田博・手塚正水）『今こそ知りたい江田島海軍兵学校　世界に通用する日本人を育てたエリート教育の原点』（新人物往来社、2009年）

さらに、雨倉は海外の海戦記の翻訳にも携わっており、その翻訳を通じて、海外の海軍史研究を日本に紹介しました。

主な訳書

リンゼイ・バーリィ『壮絶!鉄底海峡』（朝日ソノラマ、1989年）
ロジャー・ヒル『死闘の駆逐艦』（朝日ソノラマ、1991年）
A・E・ラングスフォード『国王陛下の巡洋艦』（朝日ソノラマ、1995年）
* ヨルダン・ヴァウス『Uボート・エース』（朝日ソノラマ、1997年）

雨倉孝之は、その生涯を通じて、海軍史の研究に尽力しました。彼の著作は、海軍史研究における重要な資料であり、多くの人々に読み継がれています。彼の研究は、単に過去の歴史を記述するだけでなく、そこから教訓を学び、未来に活かすための指針を示唆するものでもあると言えるでしょう。

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