雨天炎天

書籍『雨天炎天』の概要

村上春樹による紀行エッセイ『雨天炎天』は、1990年に新潮社から発行された作品であり、ギリシャとトルコを旅する様子が描かれています。この書籍はボックスセットとして「ギリシャ編」と「トルコ編」の2冊から成り立ち、1991年には新潮文庫として刊行され、2008年には新装版として再発行されました。特に新装版では、著者に同行した松村映三の撮影した写真が多数掲載されていますが、文庫版では写真の数が限られており、いずれの版にも収められていない写真も存在します。

作品の構成

g『雨天炎天』は、ギリシャ編とトルコ編の2つの構成に分かれており、それぞれ全11話からなっています。本書の冒頭には、各地への訪問地を示した地図も掲載されています。この地図は、読者が村上の旅を具体的にイメージする手助けとなっています。

ギリシャ編：アトス－神様のリアル・ワールド

ギリシャ編は、アトス半島を中心に展開している。副題は「アトス－神様のリアル・ワールド」で、著者はウラノポリという場所からアトス半島に足を踏み入れ、ギリシャ正教における修道の聖地であるアトス山を4泊5日かけて巡ります。

この編では、正教会に関連した物品や事象についても触れられています。たとえば、修道士が着用する「ラーソ」や、聖人の遺体である「不朽体」、また礼拝の際に行われる「奉神礼」など、宗教的な側面が豊富に描写されています。著者は、信仰と人々の生活が交差する場面についても細やかに筆を進めており、読者に深い感動を与えることでしょう。

トルコ編：チャイと兵隊と羊－21日間トルコ一周

一方、トルコ編は「チャイと兵隊と羊－21日間トルコ一周」という副題がついています。この部では、イスタンブールから黒海沿岸を通り、シリアとの国境に近いディヤルバクルまでの21日間にわたる旅が描かれています。著者は1988年9月にこの土地を訪れ、現地の人々や文化に触れる中で得られた感想や観察を綴っています。特に、当時のハラブジャ事件に関連する記述もあり、時代背景や社会情勢を考慮しながら、トルコの多様な面を浮かび上がらせています。

最後に

『雨天炎天』は、単なる紀行文ではなく、著者が訪れた土地での出会いや新しい発見に満ちた作品です。ギリシャとトルコの文化、歴史、そして人々の営みを通じて、村上春樹ならではの独自の視点で描かれた旅の記録は、多くの読者に感銘を与えることでしょう。写真や地図を通じて、訪れた気分を味わえる一冊の本書は、村上春樹のファンだけでなく、紀行文愛好者にもオススメの作品です。

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