零式小型水上機

零式小型水上機（E14Y）

零式小型水上機は、日本海軍において1940年に兵器採用された水上機であり、正式には「零式一号小型飛行機一型」として知られています。その後の名称変更により「零式小型水上機一一型」と呼ばれるようになり、連合国からは“Glen”（グレン）というコード名で呼ばれました。特にこの機体は、第二次世界大戦中にアメリカ本土を空襲した唯一の軍用機として有名です。

名称の変遷

零式小型水上機は1942年の海軍機の名称体系変更に伴い、内令兵第25号に基づいて新たな名称が与えられました。また、略符号E14Yもこの改称により公式に採用されました。

開発の経緯

この機体は1937年に、九六式小型水上機の後継機として空技廠での開発が始まり、初飛行は1938年に行われました。機体は主に木材と金属を組み合わせた設計で、双フロートを持つ単葉機でした。潜水艦への搭載を考慮し、コンパクトな設計が施されており、発進準備もスムーズに行えるように工夫されていました。試作機の改良を重ねた結果、1940年に兵器として正式に採用されました。生産は九州飛行機によって行われ、最終的に138機が製造されました。

運用と戦績

零式小型水上機は、巡潜甲型や巡潜乙型の潜水艦に搭載され、特に偵察任務に従事しました。この機体は南方や千島方面の偵察において活躍し、合計52回の偵察作戦のうち、48回は成功を収めました。その中で、40回は機体を無事に回収することができました。最も注目されるのは、伊25潜水艦の搭載機が1942年にオレゴン州を空襲したことで、これは日本軍によるアメリカ本土への攻撃として記録されています。

アメリカ本土空襲

具体的には、1942年9月に実施された空襲では、焼夷弾がオレゴン州の森林に投下され、火災が発生しました。この出来事は、アメリカ本土における軍用機による攻撃としては唯一の事例とされていますが、実際には過去にも他の形態の攻撃が行われたケースもあります。空襲の影響は小さく、当初は意図されていた山火事が発生しなかったため、認識されることも多くありませんでした。

性能と仕様

零式小型水上機のスペックは、全長8.53 m、全幅10.98 m、全高3.39 mであり、主翼面積は19.00 m²、最高速度は246 km/hに達します。乗員は2名、発動機は日立製の340 hpの空冷星型エンジンが搭載されており、航続距離は882 km、実用上昇限度は5,420 mです。また、武装としては7.7 mm機銃と60 kgの爆弾が装備されています。

終焉とその後

しかし、終戦時には残存機が17機と非常に少なくなり、本機の運用は次第に終了しました。また、測量艦筑紫にも航空測量用として1機が搭載されていました。零式小型水上機は、航空機の歴史の中で特異な役割を果たし、戦後の研究や資料においても重要な位置を占めています。

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