ザウルス

シャープ ザウルス：携帯情報端末の先駆者

シャープの「ザウルス」は、1990年代から2000年代にかけて、日本国内および海外で展開された携帯情報端末（PDA）のブランドです。当初は電子手帳の延長線上として登場しましたが、次第にパソコンとの連携を強化し、独自の進化を遂げました。

ザウルスの概要

「ザウルス」の愛称は、学名で「トカゲ」を意味する「サウルス」に由来し、その力強さを表現しています。当初は電子手帳の発展型として、パソコンとの連携は限定的でしたが、人気が高まるにつれてその連携性が強化されました。

ザウルスの製品は、大きく分けて以下の3つのシリーズに分類されます。

PIシリーズ: 8ビットCPUとモノクロ液晶を搭載した初期モデルで、電子手帳の延長として開発されました。
MIシリーズ: 32ビットRISC CPUとカラー液晶を搭載し、より高機能なPDAとして発展しました。独自OS「ZaurusOS」を採用しています。
SLシリーズ: LinuxをベースとしたOSを搭載し、高度なカスタマイズや拡張性を実現しました。「りなざう」の愛称で親しまれました。

各シリーズ間には互換性がなく、ソフトウェアを共有することはできませんでした。

ザウルスは、2002年11月に発売されたSL-C700で世界初のCGシリコンシステム液晶を、2004年11月発売のSL-C3000でPDA初のハードディスクを内蔵するなど、先進的な技術を積極的に採用しました。しかし、スマートフォン時代の到来とともに、2008年12月には生産を終了しました。

PIシリーズ：電子手帳からの進化

PIシリーズは、アップルコンピュータとの協力により開発され、当初は「液晶ペンコム」という名称で販売されました。手書き認識技術を搭載し、小型化、軽量化、低価格化を実現。ビジネスマンを中心に人気を集めました。

シリーズ共通の特徴

タッチパネル付き反射型モノクロ液晶ディスプレイ
8ビットプロセッサESR-L（メイン）とZ80（手書き文字認識用）を搭載
スタイラスペンによる画面入力
手書き文字認識機能
オプションポート4/15、光通信によるデータ通信
電子手帳用ICカードの一部が利用可能
アナログ電話回線に接続できるFAXモデム
単4乾電池2本で駆動

主なラインナップ

PI-3000: 初代「液晶ペンコム『ザウルス』」。FAX送信が可能。
PI-4000/4000FX: FAXモデム付属。
PI-5000/5000FX/5000DA: パソコン通信ソフトウェア内蔵。外部ソフトウェア「Add-in」が利用可能。
PI-4500:
PI-6000/6000FX/6000DA:
PI-7000: ICカードスロットなし。FAXモデムとフラッシュメモリ内蔵。
PI-6500:
PI-8000: ワイド画面。FAXモデム内蔵。
PI-6600: シルバーモデル。パソコン用ソフト同梱
業務用PI-B304/B308: 16ビットCPUとMS-DOSを採用。

MIシリーズ：高機能PDAへの進化

MIシリーズは、32ビットCPUとカラー液晶を搭載し、高機能なPDAとして発展しました。独自の「ZaurusOS」を採用し、高速で快適な動作を実現。コンシューマー向けモデルとビジネス向けモデルが存在します。

シリーズの特徴

ZaurusOSを採用
日立SH-3プロセッサを搭載
軽快な操作性と使いやすさ
C言語による開発環境
MS-DOS互換のファイルシステム
マルチタスク機能

主なラインナップ

MI-10/10DC (カラーザウルス): 初期のカラー液晶モデル。
MI-504/506/506DC (パワーザウルス): ハードウェア/OS高速化。
MI-106/106M/110M (ポケットザウルス): モノクロ液晶モデル。
MI-610/610DC (パワーザウルス): フラッシュメモリを搭載。
MI-310 (ザウルスカラーポケット): 世界初の反射型カラー液晶搭載。
MI-P1/P2 (ザウルスアイゲッティ): ハードウェアキー/ボタン採用。
MI-EX1 (ザウルスアイクルーズ): VGA液晶搭載。
MI-J1 (辞書ザウルス):
MI-C1 (パワーザウルス): 改良型反射型カラー液晶。
MI-P10 (ザウルスアイゲッティ): パワーザウルス仕様。
MI-E1 (ザウルス): 縦型ボディ、フロントライト、マルチメディア機能。
MI-L1 (ザウルス): ビジネス向けモデル。マルチメディア機能を省略。
MI-E21 (ザウルス): CPU高速化。
MI-E25DC (ザウルス): デジタルカメラ内蔵。

SLシリーズ：Linuxベースの高性能PDA

SLシリーズは、LinuxをベースとしたOSを搭載し、高度なカスタマイズ性と拡張性を実現しました。開発者向けのモデルから一般消費者向けモデルまで、幅広いラインナップが展開されました。ユーザーからは「りなざう」の愛称で親しまれました。

シリーズの特徴

ARMアーキテクチャのCPUを採用
PDA向けLinux OSを採用 (機種により異なる)
CF/SDカードスロットを搭載
Qt/Qtopia GUIツールキット採用
X11サーバを利用してPC用ソフトも動作可能

歴史

2001年11月：SL-5000Dを開発者向けに発売
2002年3月：Zaurus SL-5500を海外で発売
2002年8月：SL-A300を国内販売開始
2005年：SL-C3000を発売。OSにLineo uLinuxを採用
2006年3月：最後のZaurusとなるSL-C3200を発売

主なラインナップ

SL-A300: 国内展開初期モデル。ユーザーデータはRAMに保存
SL-B500: 海外版モデル。
国内第2世代モデル: OSがOpenPDAに変更。
国内業務用・海外第3世代モデル: 無線LANやBluetoothを搭載。
国内第3世代モデル: OSにLineo uLinuxを採用。CFハードディスク搭載可能。
* OEMおよびOS乗せ変えモデル: PocketPC 2003搭載モデル(HC-6000N, FLORA-ie MX1)

ザウルスの遺産

ザウルスは、スマートフォン時代を先取りしたかのような革新的なガジェットでしたが、ネットワーク環境やBluetoothなどの技術が整う前に市場に投入されたため、スマートフォンの波に乗ることはできませんでした。しかし、その先進的な技術やユニークなデザインは、多くのファンを魅了し、後の携帯情報端末の発展に大きな影響を与えました。

後継機としてシャープはNetWalkerや電子ノート WG-PN1などを発売し、ザウルスで培った技術やノウハウを継承しています。

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