霊的証拠

霊的証拠（Spectral evidence）とは

霊的証拠とは、夢や幻影に基づいて行われる証拠の一形態です。特に、17世紀後半のセイラム魔女裁判において、この種の証拠が用いられたことで知られています。霊的証拠は、告発された魔女の精神、すなわち亡霊が、夢や幻影として目撃者の前に現れたという証言に基づいていました。例えば、黒い猫や狼などの姿で現れると証言されることがありました。

セイラム魔女裁判における霊的証拠

セイラム魔女裁判では、首席判事のウィリアム・ストートンが霊的証拠を証拠として認めました。これは、当時の裁判において大きな影響力を持つことになりました。1662年のベリー・セント・エドマンズの魔女裁判の報告書を基にした小冊子『トライアル・オブ・ウィッチーズ』は、裁判官が霊的証拠を法廷で使用できる法的モデルとして参照しました。

霊的証拠に対する意見

霊的証拠の使用については、当時から賛否両論がありました。牧師のコットン・マザーは、法的手続きにおいて霊的証拠を認めること自体は妥当であるとしながらも、悪魔が無実の人間の姿を借りる可能性があるため、霊的証拠のみに基づいて有罪判決を下すべきではないと警告しました。

ロバート・カレフは、マザーの姿勢を批判し、『目に見えない世界の驚異』という本を出版しました。この本の中で、カレフは霊的証拠の信頼性と正当性に疑問を呈しました。カレフの本を読んだインクリーズ・マザーは、ハーバード・ヤードで公然と本を焼却し、カレフの主張に対する反論を示しました。

霊的証拠の終焉と現代法

その後、アメリカの法律は近代化され、裁判の証拠として亡霊や夢を使用することは排除されるようになりました。これは、霊的証拠が客観性に欠け、誤った有罪判決につながる可能性が高いと判断されたためです。

現代の法制度では、客観的な証拠や証言に基づいて事実認定が行われることが原則であり、霊的証拠のような主観的な証拠は、法廷で採用されることはありません。

関連項目

偽証罪

参考文献

Salem Witch Trials FAQ Page

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