霍禹

霍禹（かく う）

霍禹は、紀元前66年に処刑された前漢時代の人物です。彼は、宣帝を擁立し、朝廷で絶大な権力を握った霍光の子であり、霍皇后の兄にあたります。

生涯

霍禹は、父の霍光が権力を掌握する中で、侍中中郎将という地位に就き、霍光の異母兄である霍去病の孫にあたる霍雲・霍山兄弟と共に兵権を掌握しました。紀元前68年に霍光が重病になると、霍禹は右将軍に任命され、霍光の死後には爵位である博陸侯を継承しました。また、霍山が霍光の後を継いで領尚書事となりました。

霍禹たち霍氏一族は、贅沢で横暴な行いを重ねましたが、父である霍光の権勢を背景に、彼らを咎める者はいませんでした。しかし、霍光の死後、宣帝が親政を始めると、朝廷の勢力図は大きく変化します。宣帝は、御史大夫魏相や平恩侯許広漢、侍中金安上といった人物を重用するようになり、霍氏一族の影響力を排除しようとしました。

さらに、宣帝は中書令が直接上奏文を皇帝に提出できる制度を導入し、尚書を経由せずに上奏することが可能になりました。これにより、領尚書事が上奏を検閲することができなくなり、儒者などから霍氏の悪事を告発する上奏文が宣帝の目に触れるようになります。

霍光の娘婿である度遼将軍范明友など、霍氏一族の縁者は中央の要職から遠ざけられ始めました。紀元前67年には、霍禹は大司馬に遷されましたが、兵権は取り上げられ、実権はありませんでした。宣帝は、霍氏一党から取り上げた兵権を、自身が信頼する外戚の許氏・史氏に与えました。

当時、民間では霍光の妻である顕が、宣帝の最初の皇后である許氏（許平君）を毒殺したという噂が広まっていました。顕自身も霍禹らにその事実を認めたため、霍禹らは処刑される危険を感じ、反乱を企てるようになります。

紀元前66年、霍雲の母の兄弟である李竟の友人が、「上官皇太后に許広漢と丞相魏相を誅殺し、皇帝を廃位させるよう霍光夫人に言うべきです」と言っていたことを密告しました。追い詰められた霍禹らは、許広漢と魏相を誅殺して宣帝を廃位し、霍禹を皇帝に立てようと計画しますが、事前に発覚してしまいます。

霍雲・霍山・范明友は自殺し、霍禹は捕らえられ、腰斬の刑に処せられました。霍光の妻である顕ら一族も処刑され、霍光の娘であった皇后霍成君は廃位され、幽閉されました。この事件に連座して処刑された者は数千人にのぼると言われています。

霍禹の生涯は、権力闘争の激しさと、一族の盛衰を如実に物語っています。

参考文献

班固著『漢書』巻8宣帝紀、巻19下百官公卿表下、巻68霍光伝、巻97上霍皇后伝

登場作品

テレビドラマ『雲中歌 〜愛を奏でる〜』（2013年、中国）

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