霞ノ関

霞ノ関（かすみのせき）

霞ノ関は、東京都多摩市関戸に設けられた鎌倉幕府の関所です。この場所は、旧鎌倉街道、特に上ノ道沿いに位置しており、北側には多摩川が流れています。この関所は、1213年に起きた和田合戦を契機に設置されたと考えられており、北条氏が多摩川を防衛の拠点とするために重要視した地点でした。

歴史的背景

霞ノ関の地域は、鎌倉時代までは「吉富」として知られていましたが、室町時代には「関戸」の名称が使われるようになりました。この関所の設置は、後の「関戸」という地名の由来ともなっています。鎌倉時代から関戸地区は宿場町として栄えることで、交通の要所としての役割を果たしてきました。

現在、霞ノ関の近くには熊野神社の参道があり、そこに「霞ノ関南木戸柵跡」が存在します。これは東京都の指定文化財として重要視されており、中世の関所跡として貴重な存在です。また、ここでは旧鎌倉街道の東側でも柵跡が発見されており、昔は乞田川に向かって柵が延びていたと考えられています。さらに、霞ノ関南木戸柵跡から北へ約230メートルの位置には北木戸柵が存在したとされ、現代の観音寺から熊野神社までが当時の関所に関連する区域であったとされています。

文化遺産と供養の実施

観音寺の周辺には、関所を越えようとして処刑された人々や、戦いで命を落とした人々を供養するための板碑が数多く残されています。現在、熊野神社の参道では一部の木柱が復元されており、その形跡に思いを馳せることができます。

山林の頂上には天守台、後の関戸城が存在したとされ、霞ノ関の監視や防御に利用されていたことが分かっています。ここからは多摩川の対岸である武蔵野台地が見渡せ、その重要性を再認識することができます。

また、霞ノ関は古くから歌に詠まれており、「霞ノ関」という名称は他の地域でも見られますが、特に鎌倉時代を描いた歌謡本『宴曲抄』によって現在の地名が確認されています。この関所の役割は、鎌倉幕府の崩壊や、江戸時代に至って甲州街道や東海道が発展することで次第に薄れていったのが留意すべき点です。

関戸の戦い

さらに、霞ノ関は1333年（元弘3年）5月15日に起きた分倍河原の戦いにおいて、新田義貞が足利尊氏と鎌倉幕府との戦闘を繰り広げた舞台でもあります。この際、関戸の地域では北条泰家が防衛戦を展開しました。戦いの後、北条泰家の家臣や無名の戦士たちの墓が周囲に残され、今でも観音寺では毎月16日に戦士たちのための供養が行われています。

このように霞ノ関は、歴史的な背景や文化財、今でも続く供養の伝統とともに、深い意味を持つ場所であることが分かります。この地にはかつての繁栄と戦いの歴史が色濃く刻まれており、今後もその重要性を再認識し続けることが求められます。

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