霞ヶ浦導水事業

霞ヶ浦導水事業について

霞ヶ浦導水事業（かすみがうら どうすい じぎょう）は、茨城県の霞ヶ浦と利根川および那珂川を結ぶ重要な用水路の建設プロジェクトです。この事業は、主に地下トンネルを通じて水系間で相互に水を送り合うことを目的としています。具体的には、利根川と霞ヶ浦間を約2.6キロメートル結ぶ利根導水路と、霞ヶ浦と那珂川間の42.9キロメートルを結ぶ那珂導水路から成り立っています。利根導水路では最大25立方メートル毎秒の水量を、那珂導水路では最大15立方メートル毎秒の水を運ぶ能力があります。

目的と意義

このプロジェクトの主な目的は、渇水時における水供給の安定化や水質浄化です。特に、水戸市内にある那珂川水系の千波湖の水質を改善し、地域の水資源をより効果的に利用することが求められています。水資源の最適利用を図ることで、将来の水不足に対する備えを整える意図があります。

進捗状況と反対運動

しかし、霞ヶ浦導水事業は進行する中で様々な問題に直面しています。異なる水系間で水を人工的に送ることによる水質変化や、河川流量の減少が漁業に影響を与えることへの懸念から、地域住民や漁業者による反対運動が起こりました。特に、1995年に利根導水路の試験通水を行った際には、利根川でシジミの大量死が発生し、それが漁業協同組合（漁協）の大きな反発を招くことになりました。このため、利根導水路は「開かずの門」と呼ばれる事態となり、使用されることができませんでした。

また、那珂導水路に関しても、2009年には茨城県内の4つの漁協と栃木県内の上流漁協によって建設差し止めを求める訴訟が提起されました。その結果、2018年には東京高等裁判所で和解が成立し、アユの稚魚保護の観点から、毎年10月から翌年1月末までの夜間の取水停止や、霞ヶ浦から那珂川への試験送水時の水質調査が合意されました。

事業の全体像

霞ヶ浦導水事業は1984年に着手され、総事業費は約1900億円とされています。この中で、茨城県の負担額は約851億円です。最初は1993年度の完成を目指していましたが、反対運動やその他の問題により、工事はたびたび延期されています。現在の目標年次は2023年度であり、予算の約8割が消化されたものの、工事の進捗率は約4割と遅れが見られます。

この事業は地域の水資源を確保し、将来的には水質改善にも寄与することが期待されていますが、その過程で地域社会との調整が重要な課題となっています。

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