青山幸利

青山幸利：江戸時代前期を彩った尼崎藩主

青山幸利は、江戸時代前期、摂津国尼崎藩の2代藩主として知られる大名です。従五位下・大膳亮に叙任され、約4万8000石の領地を治めました。

青山幸利の生涯

元和2年(1616年)、尼崎藩初代藩主となる青山幸成の長男として誕生しました。父・幸成の没後、寛永20年(1643年)に家督を相続します。相続にあたり、弟たちへの分知を行い、尼崎藩の石高は4万8000石となりました。

同年に、大名火消制度が創設され、幸利は6万石以下の大名16家から選ばれた一人として、江戸の防火に貢献しました。これは2年前の振袖火事の教訓を踏まえた幕府の防災対策の一環でした。

その後、万治2年(1659年)には奏者番に任じられ、延宝5年(1677年)には播磨国における幕府領の検地を行いました。藩政においては、有能な浪人を登用するなど家臣団の刷新を図り、治水事業にも積極的に取り組むなど、領民への貢献を重視した施政を行いました。

貞享元年(1684年)、69歳で亡くなりました。長男の幸実は病弱であったため、跡を継いだのは幸実の長男、幸督でした。

神戸市中央区楠町にある浄土宗大悲山安養寺の墓所には、「青山幸利候景仰碑」が建立されています。これは平沼騏一郎の書と伝えられています。

湊川神社と青山幸利

青山幸利は、領地内において楠木正成の戦没地を調査し、その地を比定。五輪塔を建立しました。この地は後に湊川神社となり、現在も広く崇敬されています。興味深いことに、幸利自身の墓所も湊川神社の近隣に位置しています。領地の端とは言え、楠木正成ゆかりの地への深い敬意がうかがえます。

『青大録』と青山幸利の逸話

青山幸利の言動は、後世、尼崎藩士の桑原重英によって『青大録』としてまとめられました。『青大録』には、幸利に関する60以上の逸話が収録されています。また、『名将言行録』にもその名が記されています。ただし、これらの記録は後世に編纂されたものであるため、史実と完全に一致するとは限りません。

質素倹約と家臣への配慮

『青大録』や『名将言行録』には、幸利の質素倹約ぶりや家臣への温かい配慮を示すエピソードが多数記されています。

例えば、幸利は普段は朝食と夕食のみで、昼食は摂らなかったと言われています。また、本丸ではなく二の丸に住まい、遠い便所にも一人で通うなど、生活においても徹底した倹約を心がけていました。

しかし、この倹約によって得た財力は、武具の購入や優秀な人材の登用には惜しみなく使われました。大坂城天守閣の落雷炎上時には、諸大名に先駆けて私財を献上し、老中松平定綱から感嘆されたという逸話も残っています。

家臣への配慮も顕著で、鷹狩の際に増水した川を渡ろうとする背の低い家臣を自ら引き留めたり、愛馬の事故の際に家臣の安否を最優先で確認したりするなど、人情味あふれるエピソードは多くの人々に感動を与えました。

旱魃の際には、自ら陣頭指揮を執り、治水事業に尽力し、余剰分は他領にも分け与えました。その結果、他領の百姓や庄屋が新年挨拶に訪れるほど慕われていました。

江戸城での華美な服装の流行には反対し、自ら質素な装束で登城することで大名たちの風潮を変える影響力も持ち合わせていました。また、流行していた長すぎる刀の鞘を自ら切り落として回ったという逸話も残っています。

さらに、忍びの目付を使って領内の情報収集にも努めていました。彼らには直接指示を与え、必要な経費も惜しみなく支給していました。

まとめ

青山幸利は、質素倹約を旨としつつも、家臣や領民を大切にし、藩政改革や治水事業にも積極的に取り組んだ優れた領主でした。その人となりは、数々の逸話として語り継がれ、今もなお人々の心に深く刻まれています。彼の生き様は、現代社会においても学ぶべき点が多く存在すると言えるでしょう。

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