青山幸宜

青山幸宜：幕末から昭和初期を駆け抜けた郡上藩主の生涯

青山幸宜は、江戸時代末期の美濃国郡上藩の第7代にして最後の藩主です。華族として子爵に叙せられ、貴族院議員も務めた人物であり、その生涯は激動の時代を反映した波乱に満ちたものでした。

1854年、第6代藩主青山幸哉の長男として誕生した幸宜は、1863年、家督を継ぎます。翌年の天狗党の乱では幕府の命を受け出兵しますが、天狗党の通過後だったため戦闘には参加しませんでした。郡上藩内では佐幕派と尊王派の対立がありましたが、幸宜は消極的ながらも佐幕派として行動していました。しかし、1868年に戊辰戦争が始まると、新政府に恭順。一方、家老の子息である朝比奈茂吉は脱藩し、幕府側に加勢して会津若松城で戦いました。

1869年の版籍奉還により郡上藩知事となりますが、1871年の廃藩置県で免職。その後は実業家として活躍の場を移し、日本印刷社長や岩倉鉄道学校理事などを歴任しました。1884年には華族令により子爵に叙爵され、1890年には貴族院議員に就任。1925年まで5期にわたって議員を務め、赤坂区会議員、東京市会議員なども歴任しました。

書道にも造詣が深く、市川米庵に師事し、数多くの名筆を残したと伝えられています。その才能は、旧篠山藩主の子弟のための寄宿舎「尚志館」に残る看板にも見ることができます。この看板は、幸宜の従兄弟である青山忠誠が東京に設立した寄宿舎に幸宜が揮毫したものです。現在も尚志館に保存されており、その歴史と文化遺産を象徴しています。

1930年、77歳で生涯を閉じました。

青山幸宜の家族構成も興味深いものです。彼は広幡忠礼の娘、井伊直弼の娘、藤堂高邦の娘と3度結婚し、多くの子供をもうけました。長男の幸正は1904年に早世しましたが、次男の幸直が家督を継ぎ、その後は幸直の長男である幸壽が家督を相続しています。 六男の幸高は陸軍勤務の後、戦後日本で最初の競馬馬輸送自動車会社を設立。ローマオリンピックの日本馬術競技監督や日本馬術連盟理事なども務めました。七男の幸敬は陸軍獣医学校教官などを経て、戦後は会社経営に携わりました。

このように、青山幸宜は藩主としての役割を全うしたのみならず、激動の時代を生き抜き、実業家、政治家として成功を収めた人物でした。その生涯は、日本の近代化を象徴するものであり、後世に多くの足跡を残しました。彼の功績は、単なる藩主の枠を超え、日本社会の発展に貢献したと言えるでしょう。また、彼が残した書や、子孫たちの活躍は、その名声をさらに高めています。彼の人生は、日本の近代史を理解する上で重要な要素であり、今後も研究対象として注目されるべき人物です。

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