青木存義

青木 存義（あおき ながよし）は、1879年（明治12年）8月15日に生まれ、1935年（昭和10年）4月19日に没した日本の国文学者、教育者、そして作家です。数多くの文部省唱歌の作詞を手がけ、中でも童謡「どんぐりころころ」の作詞者として、その名は広く知られています。教育界や文部行政においても重要な役割を担い、明治から昭和初期にかけての日本の教育文化の発展に寄与しました。

生い立ちと学歴

宮城県宮城郡松島町幡谷新田で生を受けた青木存義は、地元の学び舎である宮城県尋常中学校（現在の宮城県仙台第一高等学校）に進学しました。卒業後、さらなる学問を求めて上京し、東京帝国大学文科大学へと進みました。文学研究に励み、1906年（明治39年）に同大学を卒業。これを機に、国文学者としての基礎を築き、その後の多様な活動へと繋げていきます。

職歴と功績

大学卒業後、青木存義はその知識と才能を様々な分野で発揮しました。1917年（大正6年）には東京音楽学校（現在の東京芸術大学音楽学部）の教授に就任し、音楽教育に携わる次世代の育成に力を注ぎました。その後、1924年（大正13年）には文部省に移り、図書編集部長という要職に就任。文部省勤務時代は、彼のキャリアの中でも特に重要な時期であり、ここで日本の学校教育で広く使われることになる文部省唱歌の編纂や、自らの作詞活動に深く関わりました。唱歌の普及を通じて、子どもたちの情操教育に大きな影響を与えたのです。晩年においては、1934年（昭和9年）に旧制新潟高等学校の校長に就任し、教育の第一線で若者の指導にあたりました。

唱歌作詞家として

青木存義の最もよく知られた顔は、唱歌作詞家としてのものです。彼が生み出した文部省唱歌は数多くありますが、中でも童謡「どんぐりころころ」は、その親しみやすいメロディー（作曲：梁田貞）と情景豊かな歌詞によって、世代を超えて歌い継がれる名曲となりました。この他にも、彼は以下のような唱歌の作詞を手がけています。

山雀太夫（作曲：弘田龍太郎）
菊の花（作曲：不詳）
お池のひごい（作曲：福井直秋）
父様母様（作曲：室崎清太郎）

これらの楽曲は、当時の日本の学校教育における音楽の時間や集会などで広く歌われ、子どもたちの心に大きな影響を与えました。また、特定の教育機関の歌も手がけており、1918年（大正7年）には神奈川県立農業学校の校歌を作詞しています（作曲：岡野貞一）。

作家「青木苫汀」として

国文学者、教育者、唱歌作詞家として活動する傍ら、青木存義は「青木苫汀（せんてい）」という別名義でも創作活動を行っていました。小説家としても才能を発揮し、1907年（明治40年）には広文堂書店から小説『我や人妻』を刊行しています。これは彼の文学的な側面を示す重要な作品の一つです。

人物像

青木存義は、伝えられる人物像として、身長180cmを超える長身で、温和な性格であったと言われています。その穏やかで誠実な人柄は、多くの人々に慕われる要因となり、教育者としても、また子どもたちの心に寄り添う歌を生み出す作詞家としても、彼の活動を支えていたのかもしれません。

主な作品一覧

以下は、青木存義の主な作品です。

唱歌

どんぐりころころ（作曲：梁田貞）
山雀太夫（作曲：弘田龍太郎）
菊の花（作曲：不詳）
お池のひごい（作曲：福井直秋）
父様母様（作曲：室崎清太郎）

校歌

神奈川県立農業学校校歌（1918年）（作曲：岡野貞一）

小説

* 我や人妻（広文堂書店、1907年）

青木存義の生涯は、国文学の研究者として出発し、教育者、行政官、そして作家・作詞家として多岐にわたる活動を展開した軌跡です。特に、彼が生み出した唱歌は、日本の童謡・唱歌文化において不朽の価値を持ち、今日なお多くの人々に親しまれています。

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