青木岩雄

青木岩雄：日本のテニス界を彩った孤高のプレーヤー

青木岩雄（1901年9月3日-1939年5月2日）は、20世紀初頭の日本テニス界を牽引した名選手です。兵庫県神戸市出身で、慶應義塾大学卒業後、三菱銀行に入行。持ち前のテニス技術と国際的な活躍で、日本のテニス史に大きな足跡を残しました。

少年時代とテニスとの出会い

青木は神戸市で5人兄弟の長男として誕生しました。三菱合資会社に勤務していた父親の転勤に伴い、幼少期から各地を転々とします。転機となったのは6歳の時、門司市（現在の北九州市門司区）の社宅近くに建設されたテニスコートとの出会いでした。この出会いが、青木の人生を大きく変え、テニスの道を歩むきっかけとなります。その後、東京に移り住み、慶應義塾普通部、慶應義塾大学へと進学します。大学時代には、当初器械体操部に所属していましたが、1年生から庭球部に転部し、本格的にテニスに打ち込むようになります。

全日本テニス選手権での活躍と国際舞台へ

1922年、全日本テニス選手権が創設され、青木は男子ダブルスに出場。初出場ながら、翌年には準優勝の成績を収めます。そして1924年、請川卓とのペアで念願の男子ダブルス優勝を果たします。大学卒業後は三菱銀行に入行し、本店営業部勤務を経て外国為替部へ異動します。銀行員としてのキャリアを積み重ねながらも、精力的にテニス活動を続けました。

青木は、国内での活躍にとどまらず、国際舞台でもその実力を発揮します。1925年には、来日したキンゼイ兄弟と対戦し、兄のハワードを破る快挙を成し遂げました。1929年にはデビスカップ寄贈者であるドワイト・デービスの訪日や、フランスからの選手団との国際試合にも参加。これらの試合では、高いレベルのプレーで勝利を収め、国際的な評価を高めていきます。

ウィンブルドン選手権挑戦と英国生活

1930年、青木は三菱銀行ロンドン支店へ転勤します。5年間の英国生活は、彼のテニス人生において大きな転換期となりました。1931年から1934年にかけて、ウィンブルドン選手権に4度出場。特に1932年大会では、4回戦に進出し、当時最強クラスの選手であったエルスワース・バインズ（アメリカ）と対戦。バインズから1セットを奪う健闘を見せ、日本に大きな衝撃を与えました。この活躍は、日本のテニス界に大きな勇気を与え、国際的な知名度を向上させるのに貢献しました。

しかし、青木は銀行員としての責任感も強く、デビスカップへの出場要請には一度も応じませんでした。ロンドン在勤中は、銀行業務に専念し、日本代表としての活動よりも、自身の業務に重きを置いていたようです。

帰国後と急逝

1935年3月に帰国した青木は、東京本店、大阪支店の外国為替部に勤務。1936年には、日米国際庭球戦の来日選手であるバインズの紹介記事を執筆するなど、テニス界への貢献を続けました。

しかし、1939年4月、腹痛を訴え、大阪回生病院で手術を受けます。虫垂炎と診断されましたが、その後「絞扼性腸閉塞症」と判明し、2度目の手術を行うも回復することはなく、5月2日、37歳で急逝しました。

青木岩雄の早すぎる死は、日本のテニス界に大きな衝撃を与えました。彼の功績を称え、友人や知人からの追悼文を集めた『青木岩雄君』という追悼録が出版され、その生涯と人となり、そして才能が後世に伝えられています。

青木岩雄は、卓越したテニス技術と国際的な活躍で日本のテニス界に大きな足跡を残した選手でした。彼の功績は、日本のテニスの発展に大きく貢献し、現代のテニス選手たちの活躍の礎となっています。彼の早すぎる死はまことに残念ですが、その名と功績は永遠に語り継がれることでしょう。彼の生涯は、日本のテニス史に燦然と輝く一ページとして刻まれています。

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