青木恵哉

青木恵哉：ハンセン病を乗り越え沖縄の患者を救った伝道師

青木恵哉（あおきけいさい、1893年 4月8日 - 1969年 3月6日）は、日本の伝道師であり、本名を青木安二郎といいます。彼はハンセン病を患いながらも、その信仰と献身的な活動によって、沖縄のハンセン病患者たちを救済し、国頭愛楽園の設立に大きく貢献しました。

生涯

1893年、青木恵哉は徳島県で生まれました。16歳でハンセン病を発病し、様々な薬を試すも効果がなく、神社への参拝や四国八十八箇所巡礼も行いました。1916年には香川県の大島療養所に入所し、そこで信仰に触れ、聖書を読むようになりました。1918年にはアメリカ人宣教師エリクスンから洗礼を受け、キリスト教徒となりました。

しかし、異性との関わりで悩んだ青木は、熊本県の回春病院に手紙を出し、転院を決意します。その後、長野県軽井沢町でハンナ・リデルと出会い、回春病院への転院を強く勧められました。熊本へ向かったことが、関東大震災を避けることになり、これを機に「恵哉」と改名しました。

回春病院では、聖公会の教会に所属し、伝道活動を行いましたが、患者である玉木愛子への愛情に悩み、リデルの指導方針との間で葛藤しました。その後、リデルに沖縄伝道を勧められ、1927年に荒砥牧師と共に沖縄へ渡りました。

沖縄での伝道活動

沖縄本島の離島である伊江島を拠点に、洞窟や山に隠れている患者たちを発見し、食料や衣服を与え、共に礼拝しました。荒砥牧師が洗礼を施し、リデルからは月給25円が送られました。その後、屋部に拠点を移しましたが、1935年に焼き討ち事件に遭い、屋我地島の沖にある無人島ジャルマに逃れました。約40人が住むことになったこの島で、生活を立て直した後、屋我地島に安住の地を求めました。

1938年、彼の活動を基に国頭愛楽園が設立されました。愛楽園が設立されるまでの青木恵哉の苦労を物語る碑には「魚ならば海にもぐりても生きん鳥ならば空に舞い上がりてものがれん五尺（約150cm）の体、住む所なし」という言葉が刻まれています。1948年には沖縄聖公会に復帰し、1957年にアメリカ聖公会ハワイ教区から伝道師の認可を受けました。

1958年には著書『選ばれた島』を出版し、1966年に沖縄伝道教区から執事に叙任されました。1969年 3月6日、心筋梗塞のため75歳で亡くなりました。

顕彰

青木恵哉の功績を称え、1971年には愛楽園発祥の地に「青木恵哉頌徳碑」が建立され、1976年には屋我地大橋南側駐車場内に「のがれの島」の碑が建てられました。2005年には愛楽園発祥の地に「青木恵哉銅像」が建立され、記念パンフレットも発行されています。

人物像

青木恵哉を知る人々の証言によれば、彼は優しい一面を持ちながらも、タバコや飲酒、異性関係には厳しかったとされています。彼は自らも禁酒を守りながら、患者たちの生活態度を正そうとしたため、隠れてタバコを吸う患者もいたようです。

青木恵哉の文学作品

青木恵哉は詩作にも才能を発揮し、俳句集『一葉』を遺しました。彼の俳句には、病との闘いや信仰生活、そして沖縄の風土が色濃く反映されています。また、著書『選ばれた島』は、彼の沖縄での活動を詳細に記録しており、多くの人々に感動を与えています。

青木恵哉以前の沖縄の状況

ハンセン病患者が多かった沖縄県では、療養所の建設が急務でした。しかし、県議会は曖昧な決定を繰り返し、患者たちは苦境に立たされていました。そのような状況下で、青木恵哉の活動が始まり、光田健輔、林文雄、沖縄MTL、日本MTL、東京YMCA、三井報恩会などの協力もあり、1938年に国頭愛楽園が設立されました。それ以前には、沖縄県の一部患者は敬愛園に収容されたこともありました。

療養所のための土地入手秘話

国頭愛楽園の設立には、青木恵哉の協力者であった大城平永の尽力がありました。大城は青木からキリスト教と大風子油の注射を教わり、洗礼を受けました。1930年、青木が土地の必要性を訴えた際、大城は私有地と交換で1500坪の土地を確保しました。この事実は、問題解決のために土地を確保するのに尽力し、青木と大城の間で秘密にされていました。