青木拓磨

青木拓磨：不屈の闘志と挑戦の軌跡

群馬県出身の青木拓磨は、1974年生まれのオートバイロードレースライダー、そしてレーシングドライバーです。有名な「青木三兄弟」の次男として、兄・青木宣篤、弟・青木治親と共にモータースポーツの世界で名を馳せました。

華々しいロードレース時代

幼少期からポケバイ、ミニバイクレースで培った高いスキルをベースに、1990年にロードレースデビュー。1991年には国際A級に特別昇格し、全日本ロードレース選手権GP250クラスに参戦しました。兄、弟が海外へと活躍の場を移す中、青木拓磨は国内で技術を磨き続けました。1994年にはGP500クラスの廃止に伴い、国内最高峰となったスーパーバイククラスに転向。1995年にはホンダワークスのHRCに加入し、全日本チャンピオンを獲得するという快挙を成し遂げます。さらに、同年、ワイルドカード枠で出場したロードレース世界選手権日本GPでは、NSR500に乗り、見事3位表彰台を獲得しました。1996年にはスーパーバイククラスで連覇を達成し、その名を不動のものとしました。

1997年、満を持してロードレース世界選手権GP500クラス（現MotoGP）にレプソル・ホンダよりフル参戦。マシンはNSR500Vでしたが、開幕戦マレーシアGPでは一時トップを走行するなど、その実力を世界に示しました。イモラでは兄・宣篤と共に兄弟での表彰台、最終戦オーストラリアでは優勝を争う接戦を演じ、2位でフィニッシュ。フル参戦初年度ながら、3度の表彰台を獲得し、年間ランキング5位という素晴らしい成績を収めました。

挫折からの再生

1998年、充実した日々を送っていた最中、青木拓磨は予期せぬ事故に遭います。ホンダのテストコースでテスト走行中、ハイサイドを起こし転倒、頭部をバリアに激突。脊髄損傷により、下半身不随という大きなハンデを負うこととなりました。

四輪への転向と挑戦

絶望的な状況の中、青木拓磨は諦めませんでした。事故翌年の1999年には車椅子でホンダ・レーシング助監督に就任し、モータースポーツ普及活動にも力を入れます。元F1ドライバー、クレイ・レガッツォーニのレース復帰に刺激を受け、自らもレースへの復帰を決意。手動カート「ハンドドライブ・クロス」で経験を積んだ後、改造車を用いてアジア・クロスカントリーラリーやダカール・ラリーに参戦しました。

競技ライセンス取得においては、当初「体に50%の障がいがある人には発給できない」とJAFから断られるなど、多くの困難に直面しました。しかし、彼の強い意志と周囲のサポートにより、ライセンスの限定が解除され、14年ぶりに全日本クラスの競技へ復帰。スーパー耐久シリーズに参戦するなど、精力的に活動を続けました。

2013年にはFIAから国際競技ライセンスを発給され、GTアジア、アジアン・ル・マン・シリーズなど、海外のレースにも出場。そして、悲願であったル・マン24時間レース出場に向けたプロジェクトを立ち上げ、2021年にはついに念願のル・マン24時間レースを完走。2023年にはアジアクロスカントリーラリーで総合優勝を達成するなど、数々の偉業を達成しています。

夢を諦めない、挑戦し続けること

青木拓磨は、レーサーとしての活動に加え、講演会や訴求活動などを通して、「夢をあきらめない、挑戦し続けること」の大切さを伝えています。2019年には、弟・治親が代表を務める「サイドスタンドプロジェクト」にも参加。21年ぶりにバイクに跨り、鈴鹿サーキットを走行するなど、新たな挑戦を続けています。彼の生き様は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

青木拓磨の物語は、単なるモータースポーツの成功物語ではありません。困難に立ち向かい、自身の限界に挑戦し続ける、人間の強さと不屈の精神を体現した、感動的な物語なのです。

もう一度検索