青柳俊彦

青柳 俊彦（あおやぎ としひこ）氏は、1953年（昭和28年）8月19日、鳥栖市に生を受けました。両親は佐賀県の出身です。鉄道にゆかりの深い家系に育ち、祖父は国鉄の技術職員、父は国鉄病院に勤務する医師でした。幼少期は門司市（現在の北九州市門司区）で過ごし、門司病院の近くで小学校時代を送りました。

教育の道を辿り、1966年（昭和41年）3月には北九州市立清見小学校を卒業。その後、難関として知られるラ・サール高等学校に進み、1972年（昭和47年）3月に卒業しました。学究はさらに深まり、1977年（昭和52年）3月には東京大学工学部を卒業しています。

同年4月、日本の鉄道を支える大組織であった日本国有鉄道（国鉄）に入社しました。この時の同期には、後にそれぞれ九州旅客鉄道（JR九州）会長、東海旅客鉄道（JR東海）会長となる唐池恒二氏、柘植康英氏がおり、同期3名が後にJRグループのトップを担うという稀有なキャリアを歩むこととなります。国鉄では、中央本線、千葉運輸区、梅小路駅といった様々な現場で経験を積みました。また、キャリアの途上でアメリカ合衆国への留学機会を得て、機械工学の分野で修士号を取得。さらに、日本原子力研究所への出向も経験するなど、幅広い知見と経験を培いました。

1987年（昭和62年）4月、国鉄の分割民営化という歴史的な転換期を迎えるにあたり、青柳氏は新たに設立された九州旅客鉄道株式会社（JR九州）へ移籍しました。故郷ともいえる門司に戻り、総合企画本部経営管理室の副長として新たなスタートを切りました。以降、JR九州において着実にキャリアを積み上げていきます。

1988年（昭和63年）4月からは総合企画本部のシステム委員会事務局副長を務め、翌1989年（平成元年）5月には同本部のシステム開発本部副長に就任するなど、初期にはシステム関連の部署で活躍しました。1991年（平成3年）10月にはシステム運用課長、1992年（平成4年）3月には技術・運行本部運輸部担当課長となり、業務の幅を広げました。

運輸部門での経験は続き、1993年（平成5年）4月には技術・運行本部運輸部輸送課長、1995年（平成7年）4月には同本部運輸部長付担当課長を歴任。そして、1998年（平成10年）6月には技術・運行本部運輸部長に昇進しました。この間、鉄道運行の中枢に関わる要職を担いました。

2001年（平成13年）4月、組織改編に伴い鉄道事業本部運輸部長に就任。現場経験とマネジメント能力をさらに磨きました。地方支社の運営にも深く関わり、2004年（平成16年）6月には鹿児島支社長、翌2005年（平成17年）6月には取締役鹿児島支社長に就任し、地域に根差した鉄道事業の指揮を執りました。

その後、2006年（平成18年）5月に取締役鉄道事業本部副本部長となり、本社での執行役員としての役割を強化。2008年（平成20年）6月には常務取締役鉄道事業本部長、2012年（平成24年）6月には専務取締役鉄道事業本部長と昇進を重ね、JR九州の主力部門である鉄道事業を統括する立場となりました。2013年（平成25年）6月には代表権を持つ代表取締役専務に就任しました。

そして2014年（平成26年）6月、JR九州の代表取締役社長に就任。経営のトップとして、同社のさらなる成長と発展を牽引しました。社長在任中の約8年間、様々な経営課題に取り組み、JR九州グループ全体の運営に責任を負いました。

2022年（令和4年）4月からは、代表取締役会長に就任し、現在に至ります。会長として、引き続きJR九州の経営に携わっています。

青柳氏は、キャリアを通じて鉄道事業の多岐にわたる分野に精通していますが、特に郷里とも縁深い門司の地に対して深い関わりを持っています。門司港駅が国の重要文化財に指定される過程や、その後の創建当時の姿への復原事業において、中心的な役割を果たしました。これは、彼の門司への想いと、歴史的建築物への深い理解を示すものです。

また、自身の父祖代々が鉄道に携わる家系であるように、彼の息子もまたJR九州で勤務しており、鉄道に対する情熱と関わりが次世代にも受け継がれていることが伺えます。鉄道一筋のキャリアと、地域や歴史への貢献、そして家族へと連なる鉄道との縁は、青柳氏の人となりを語る上で重要な側面と言えるでしょう。

もう一度検索