青柳藩

青柳藩の概略と歴史

青柳藩（あおやぎはん）は、江戸時代初期の短い間だけ存在した藩で、上野国邑楽郡青柳（現在の群馬県館林市青柳町付近）をその所領としていました。藩は1614年に近藤秀用が大名となることで設立されましたが、1619年には旧領の遠江国井伊谷に移封されることとなり、藩としては廃藩となりました。

近藤秀用の前史

近藤秀用は、戦国時代から江戸初期にかけての武士で、「井伊谷三人衆」 の一人である近藤康用の子です。彼は徳川家康に従い、数々の戦闘で武功を挙げました。特に、三方ヶ原の戦いや長篠の戦いなどに参加し、名声を高めました。天正12年（1584年）以降は、井伊直政に仕官し、さらに多くの戦に従軍してその能力を示しました。ですが、その後、彼は井伊直政のもとを離れ、徳川家に直属の士として仕官する道を選びました。

慶長7年（1602年）には德川秀忠に仕官し、上野国邑楽郡で5000石を与えられ、鉄炮足軽50人を預かることになりました。この時期には、秀忠の上洛に際して槍奉行としても活躍しました。

藩の設立と活動

慶長19年（1614年）、秀用は新たに1万石の知行地を得て、合計1万5000石になりました。これにより青柳藩が立藩されました。秀用は小田原城の番としても任命され、その地に居住しました。また、彼は二度にわたり大坂の陣に参加し、武功を挙げました。この時、彼の二男用可（もちよし）も武士となり、秀用と共に功績を残しました。

元和元年（1615年）、秀用は用可に5000石を分与し、藩の知行を1万石に整理しました。しかし、大坂の陣の後、彼は小田原城番を解かれました。

井伊谷への移封

近藤秀用の長男、近藤季用はすでに徳川家康の家臣として独立した地位を持っていました。しかし、彼が亡くなった後、その子近藤貞用が跡を継ぎました。元和5年（1619年）、徳川頼宣が紀州藩に移封される際に、貞用は附属されることになりました。この結果、秀用の知行地は相模国・上野国から遠江国に移されることが決まったため、青柳藩は廃藩となりました。

近藤秀用は井伊谷に新たな居所を定め、井伊谷藩（1万石）として地位を確立しました。しかし、貞用は元和6年（1620年）に旗本として呼び戻され、秀用は貞用に3140石を分知したため、近藤家の大名としての「井伊谷藩」は短命に終わりました。ただし、近藤家は「五近藤」と呼ばれる5つの旗本家に分かれ、幕末まで井伊谷周辺の領主として存続しました。

青柳の地名と歴史的背景

青柳という地名は、室町時代には既に文献に登場し、戦国期には「青柳郷」と記されていました。また、青柳は中世の重要な交通路の一部でもあり、利根川から青柳を経由して、奥州へと向かう道として多くの人々に利用されていました。戦国時代には赤井氏が青柳城を拠点に周辺を支配しましたが、近藤氏が藩主となった期間は非常に短かったため、地元ではあまり伝承が残っていません。

青柳藩の名残は、近藤町という地名にも見られ、藩の陣屋が存在していたという記録も残っています。支配地の不明確さから時には「青柳藩」という呼称の適切さが議論されることもありますが、こうした歴史的背景により青柳藩は重要な存在として記憶されています。

もう一度検索