青鞜

『青鞜』の歴史と影響

『青鞜』は、1911年9月から1916年2月までの間、青鞜社によって発行された婦人月刊誌です。女性たちによって編集され、平塚らいてうや伊藤野枝がその中心にいました。この雑誌は、当時の日本社会における女性の地位を問い直す重要な役割を果たしました。

創刊の背景

明治末期、日本社会では「良妻賢母」が理想とされ、多くの女性が選挙権を持たず、政治活動も制限されていました。しかし、欧米ではフェミニズム運動が広まり、日本にもその風潮が流入していました。平塚らいてうは、その流れに応じて『青鞜』という女性だけの文芸誌を創刊することを決意しました。彼女は、日本女子大学校の同窓生である保持研子の後押しを受けて、1911年、女性の知識人が集う場としてこの雑誌を立ち上げました。

創刊の名は、生田長江によってつけられたもので、「Bluestocking」の日本語訳です。これは、18世紀イギリスの教養ある女性たちを象徴する存在として受け入れられたことに由来しています。雑誌の表紙は、長沼智恵子の作品が飾りました。創刊号では、平塚らいてうが「元始女性は太陽であった」に始まる辞を寄稿し、女性の自由と権利について語りました。

直面した困難

創刊当初、『青鞜』は順調そのものでしたが、発行から間もなくして内外からの批判にさらされるようになります。特に、1912年には姦通をテーマにした小説『手紙』が発禁となり、その後も多様な女性問題について取り上げることが厳しく批判されました。例えば、尾竹紅吉というメンバーが、自身の私生活を率直に誌上に綴った結果、社会的なバッシングを受けることになり、『青鞜』のイメージが「ふしだらな女性」の代名詞にされてしまう一因となりました。

また、青鞜社自体も内部のメンバーの変動や意見の不一致に苦しみます。1913年には生田が去り、平塚は自身の初志に立ち返るべく、雑誌の方針を再検討しましたが、発行部数は徐々に減少していきました。その後、平塚は母の資金援助を受けながらも、忙しさに追われていくつかの号を発行できない時期もありました。

女性問題の提起

『青鞜』は、社会問題に対して女性の視点から鋭い議論を展開しました。売春や堕胎に関する論争もその一環として扱われ、女性の権利の重要性が強調されました。1914年、平塚が両親の家を出て同棲を始めたことも話題となり、それに対する賛否が分かれました。

廃刊への道

しかし、1916年には伊藤が大杉栄のもとへ走り、編集の主導権を握ることとなりました。この頃には、青鞜社内部の意見対立が大きくなり、最終的に休刊に至る決断が下されました。その後も青鞜社は発行を続けようと試みましたが、社会的な逆風や内部的な混乱により復活は果たせず、最終的には発行停止となりました。

文化的意義

『青鞜』は、確かに文学史的には大きな影響を及ぼしたとは言えませんが、当時の婦人問題に対する意識を高めたことは評価されています。女性の社会的立場や権利についての重要な議論の場を提供し、多くの女性たちがその影響を受けました。これにより、日本社会における女性の自立と権利擁護の先駆けとして、『青鞜』は今日に至るまで語り継がれています。

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