静岡県立静岡農科大学

静岡県立静岡農科大学：地域農業の礎を築いた短命な大学

静岡県立静岡農科大学は、1950年から1955年までの短い期間、静岡県磐田市に本部を置いていた公立大学です。しかし、その歴史は前身の旧制静岡県立静岡農林専門学校から連綿と続いており、地域農業の発展に大きく貢献しました。本稿では、その設立の背景から、国立静岡大学への編入、そして現在へと続く農学部の歴史を紐解きます。

静岡県立静岡農林専門学校の設立

第二次世界大戦後、食糧増産が急務となる中で、農業技術者の育成が急務となりました。その一環として、各地に公立の農林専門学校が増設されました。静岡県でも、1946年8月に静岡県議会が農林専門学校の設立を決議し、同年10月には創立準備委員会が発足しました。

1947年3月31日、専門学校令に基づき静岡県立静岡農林専門学校の設立が認可され、農科と林科が設置されました。当初は既存の農業学校である静岡県立中泉農学校（現在の静岡県立磐田農業高等学校）に併設される形となりましたが、独立した校舎を持つ方針が立てられました。

同年5月1日には開校式が挙行され、新たな学び舎での教育がスタートしました。学生たちは、荒廃した旧陸軍の兵舎を改修した校舎で、農業と林業の知識・技術を習得していきました。

静岡県立静岡農科大学への昇格、そして国立移管

学制改革の波が押し寄せる中、静岡県立静岡農林専門学校は、新制大学への昇格を目指すことになります。しかし、国への移管を待つだけでなく、県費で設備を充実させるため、1950年3月14日に静岡県立静岡農科大学として改めて設置認可を受けました。これにより、農学部のみの単科大学として、新たなスタートを切りました。

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。本来附属農場に予定していた土地が、周辺住民との耕作権問題で利用できなくなるなど、困難な状況も経験しました。それでも、大学関係者は諦めることなく、教育・研究環境の整備に尽力しました。

1950年9月には国立移管を申請し、1951年1月31日には静岡大学農学部の増設が認可されました。同年4月1日、静岡県立静岡農科大学は国立に移管され、静岡大学農学部として新たな一歩を踏み出しました。県立静岡農林専門学校は、同年3月31日をもって廃止されました。

その後

静岡大学農学部は、その後も発展を続け、1973年4月には現在の静岡キャンパス（静岡市駿河区大谷）に移転しました。一方、磐田市見付の旧校地は、現在は静岡県立農林大学校キャンパスおよびかぶと塚公園となっています。静岡県立静岡農科大学は短命に終わりましたが、その精神は静岡大学農学部、そして静岡県立農林大学校へと受け継がれ、地域農業の発展に貢献し続けています。

歴代校長・学長

旧制静岡県立静岡農林専門学校
初代：大杉繁（1947年4月 - 1951年3月）
静岡県立静岡農科大学
初代：大杉繁（1950年4月 - ）
静岡大学農学部
初代学部長：大杉繁

関連項目

高等農林学校
学制改革

参考文献

作道好男・作道克彦（編）『静岡大学農学部史』教育文化出版教育科学研究所、1986年8月。

外部リンク

静岡大学農学部 - 後身校
静岡大学沿革図 (PDF)
静岡大学農学部同窓会

もう一度検索