面ファスナー

面ファスナーについて

面ファスナー（めんファスナー）は、物同士を面で着脱可能に結合するためのファスナーです。主に衣類の管理や雑貨に使われ、特に再利用が可能な点で優れています。一般には「マジックテープ」や「ベルクロ」として知られていますが、これらは商標名にすぎません。面ファスナーの発明者は、スイス人エンジニアのジョルジュ・デ・メストラルであり、1941年の登山中にゴボウの実が服に付着しているのを見て、着想を得ました。1948年から研究を始め、1951年に特許を出願、1955年には公式に認可されました。

歴史の概観

ジョルジュ・デ・メストラルは、面ファスナーの特許を取得する前に、1948年からこの技術の研究を続け、1952年にはスイスにてVelcro S.A.を設立しました。この会社は現地法人を持ち、他国へのライセンスも行っていました。日本では、1960年に日本ベルクロ（現：クラレ）が「マジックテープ」の商標で販売を開始し、現在もその子会社が製造を続けています。ベルクロという名前は、フランス語の「velour（ビロード）」と「crochet（鉤）」の合成語です。

面ファスナーの特徴

基本的な構造としては、フック状の面とループ状の面を組み合わせて接続することで、容易に貼り付けや剥がしができます。フックとループの両方が配置されたデザインや、強力に結合するマッシュルーム状のタイプも存在します。一方で、面ファスナーは使用上の欠点も抱えています。たとえば、表面に糸くずやほこりが付着しやすく、これが吸着力を低下させる原因となります。また、劣化に伴って長期間使用する中で吸着力が落ちることがあるため、定期的なメンテナンスと交換が推奨されます。

利用されるジャンル

面ファスナーの用途は多岐にわたります。一般衣料品や雑貨では、調整が容易で、安全性も高いため、特に小さな子供向けの靴に利用される傾向があります。これにより、靴ひもを結ぶのが難しい子供でも簡単に着脱できるようになっており、転倒のリスクを減少させることができます。最近では、ファッション性を兼ね備えた面ファスナー付きのスニーカーも増えており、成人にも浸透しています。

スポーツ用品では、サッカーや他の競技で使われる脛当てなど小物に広がりを見せていますが、先端選手向けには靴紐の方が細かな調整が可能という理由から、利用は限られていました。しかし、近年ではトップレベルの選手でも面ファスナーを取り入れた製品を使う事例が増えてきています。

医療器具においては、けが人や身体障害者のための器具としても多く見られ、簡単に装着・脱着ができることから便利さが評価されています。

軍事・特別用途

面ファスナーは、フランス軍やアメリカ陸軍の制服でも採用されています。これにより、階級章や部隊章などの取り付け方が利便性を持つようになり、洗濯時のトラブルやコスト削減に役立っています。NASAでも宇宙機用の面ファスナーが使われ、アポロ宇宙船などを通じて無重量の環境でも物の固定に寄与しました。特撮のスーツでも、リアリティを追求するために着脱を容易にする手段として採用されています。

面ファスナーは、さまざまな場面でその特性を生かし、人々の生活を便利にしています。

もう一度検索