韋元旦

韋元旦（い げんたん、生没年不詳）は、唐代に生きた詩人であり、その足跡は政治的な変動に翻弄されながらも、最終的には才能を開花させた人物として知られています。

彼は京兆府万年県（現在の陝西省西安市）の出身で、科挙の試験である進士に合格し、東阿県尉（とうがけんい）という地方官吏の職に就きました。その後、中央に戻り左台監察御史（さだいかんさつおんし）という官職に進みます。しかし、彼の運命は、時の権力者である則天武后の寵臣、張易之（ちょういし）との関係によって大きく左右されることになります。韋元旦は張易之の姻戚であったため、張易之が失脚すると、連座して感義県尉（かんぎけんい、現在の広西チワン族自治区梧州市藤県の西）へ流刑に処せられてしまいます。

しかし、彼の血筋はここで彼を救います。中宗（ちゅうそう）の皇后である韋氏（いし）もまた韋元旦と同じ一族であったため、皇后の取り成しによって罪を許されることになります。そして、都に戻った韋元旦は、主客員外郎（しゅきゃくがいらん）という官職を経て、ついには中書舎人（ちゅうしょしゃじん）という要職にまで昇りつめました。中書舎人は、皇帝の側近として機密文書を扱う重要な役職であり、彼の政治的な手腕と才能が認められた結果と言えるでしょう。

韋元旦の作品として現在に伝わっているものは多くありませんが、その中でも「興慶池（こうけいち）侍宴応制」という詩は、彼の代表作として知られています。この詩は、興慶池という宮廷の庭園で行われた宴会で、皇帝の命に応じて詠まれたものと考えられています。当時の宮廷の華やかさや、詩人としての彼の才能を垣間見ることができるでしょう。

韋元旦の生涯は、唐代の政治的な変動と密接に結びついており、彼の栄光と挫折は、当時の社会情勢を反映していると言えます。彼の作品は少ないながらも、唐代の詩の多様性を示す一例として、文学史にその名を残しています。

伝記資料

『新唐書』巻202 列伝第127 文芸中

出典

『唐詩選』（版：岩波文庫、註解：前野直彬）

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