韋誕

韋誕（い たん）

韋誕（181年 - 253年）は、後漢末期から三国時代の魏にかけての人物。字は仲将（ちゅうしょう）。名門である司隷京兆尹杜陵県（しれいけいちょういんとりょうけん）の出身。

生涯

父は後漢の大臣であった太僕（たいぼく）の韋端（い たん）。孔融（こうゆう）は韋端に宛てた手紙の中で、兄の韋康（い こう）を「淵才は卓越しており、雅かつ弘毅で、今世の優れた人物である」と評し、韋誕を「性格は穏やかで誠実であり文章に優れていて、家を保つ主となるだろう」と評した。孔融は兄弟をそれぞれ高く評価し、韋端のような親からこれほど優れた息子たちが生まれたことを「老蚌生珠」（ドブガイから真珠、平凡な親から優れた子が生まれることのたとえ）と讃えた。

建安年間に上計吏（じょうけいり）として官吏の道を歩み始め、後に郎中（ろうちゅう）に任ぜられた。太和年間には武都太守（ぶとたいしゅ）となり、その書の名声から、正始年間に侍中（じじゅう）に遷った。その後、中書監（ちゅうしょかん）を経て光禄大夫（こうろくたいふ）に至った。嘉平5年（253年）に75歳で没した。

書家としての才能

韋誕は特に書に優れており、草書を得意としたため「草聖」と呼ばれた。しかし、楷書にも長けており、その才能は多岐にわたった。魏王朝の宝器の銘題は、全て韋誕が書いたと伝えられている。自らの書について、張芝（ちょうし）の筆、左伯（さはく）の紙、そして自身の墨を使うときのみ立派な字を書き得ると語ったという。

また、宮殿の扁額（へんがく）もしばしば揮毫（きごう）した。『世説新語（せせつしんご）』には、宮殿を造営した際のエピソードが紹介されている。それによると、梯子に登って扁額を書かされたというが、『四体書勢（したいしょせい）』には、現代の高層ビルの窓拭きゴンドラのように、縄を付けた籠に載せられ、地上約60mの高さまで引き上げられて扁額を書かされたという、信じがたい話が記されている。この時、韋誕は恐怖のあまり髪も髭も白くなってしまい、子孫には決して書道を学ばないよう遺言したと伝えられている。

文筆家としての才能

韋誕は文章にも巧みであり、属辞（しょくじ）の技法に長けていたという。属辞とは、文章を作成する際に、適切な語句を選び、効果的に配置する技能のことである。

『魏書』編纂への参画

劉知幾（りゅうちき）の『史通（しつう）・古今正史篇』によると、曹魏（そうぎ）の国史である『魏書』の編纂にも参画したとされる。

韋誕は、書家としてだけでなく、文筆家、そして歴史編纂者としても、その才能を発揮した人物であった。

参考文献

『書断』列伝
『史通』巻十二古今正史篇

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