世説新語

世説新語（せせつしんご）

『世説新語』は、中国南北朝時代の南朝宋の時代、臨川王の劉義慶によって編纂された文言小説集です。後漢末から東晋にかけての著名人の逸話を集めたもので、当時の社会や文化、人々の価値観を知る上で貴重な資料となっています。

概要

編者である劉義慶は文芸を好み、多くの学者や文人を集めて様々な書物を編纂しました。『世説新語』もその一つで、収録された逸話は、人物の徳行、弁舌、政治手腕、文学的才能など、多岐にわたる側面を描いています。全部で三十六篇に分類されており、各篇はそれぞれ異なるテーマを持っています。

ただし、『世説新語』はあくまで小説集であり、史実とは異なる逸話も含まれている点に注意が必要です。しかし、その分、当時の人々の考え方や価値観、社会の雰囲気を生き生きと伝えてくれます。後世の人物評価に与えた影響も大きく、歴史研究においても重要な資料とされています。

成立の背景には、後漢末期から行われていた人物評論（月旦評）が、魏晋期の貴族社交界で盛んになったことがあります。特に、「清談」と呼ばれる老荘思想に基づいた哲学的談論は、当時の貴族たちの間で流行し、『世説新語』にもその様子が色濃く反映されています。

『世説新語』は編纂後まもなく、南朝梁の劉孝標によって注釈が加えられました。この注は、本文の補足や語句の解説だけでなく、本文の誤りを訂正したり、散逸した書物の引用を行ったりするなど、非常に価値の高いものとして評価されています。

日本への影響

『世説新語』は日本でも古くから読まれ、多くの亜流作品が生まれました。明代に中国で編纂された『世説新語補』が江戸時代に紹介され、和刻本が出版されるなど、研究も盛んに行われました。

主な登場人物

陳寔
孔融
曹操
楊修
何晏
夏侯玄
鍾会
竹林の七賢
夏侯湛
王衍
王導
王敦
庾亮
王羲之
支遁
司馬昱
桓温
謝安
桓玄

各篇の名称

第一　徳行篇
第二　言語篇
第三　政事篇
第四　文学篇
第五　方正篇
第六　雅量篇
第七　識鑒篇
第八　賞誉篇
第九　品藻篇
第十　規箴篇
第十一　捷悟篇
第十二　夙慧篇
第十三　豪爽篇
第十四　容止篇
第十五　自新篇
第十六　企羨篇
第十七　傷逝篇
第十八　棲逸篇
第十九　賢媛篇
第二十　術解篇
第二十一　巧芸篇
第二十二　寵礼篇
第二十三　任誕篇
第二十四　簡傲篇
第二十五　排調篇
第二十六　軽詆篇
第二十七　仮譎篇
第二十八　黜免篇
第二十九　倹嗇篇
第三十　汰侈篇
第三十一　忿狷篇
第三十二　讒険篇
第三十三　尤悔篇
第三十四　紕漏篇
第三十五　惑溺篇
第三十六　讎隙篇

日本語訳注

目加田誠訳注「世説新語　新釈漢文大系」明治書院（全3巻、1975-78年）
「世説新語　新書漢文大系21」（長尾直茂編、明治書院、2003年）
竹田晃訳著「世説新語　中国古典小説選3」明治書院（2006年）
森三樹三郎訳注「世説新語　中国古典文学大系9」平凡社（復刊1994年）
井波律子訳注「世説新語」平凡社東洋文庫（全5巻、2013-14年）

外部リンク

『世説新語』 （広島大学中国文学語学研究室のWebサイト）
東京国立博物館所蔵 機関管理番号:TB-1570『世説新書巻六残巻』 - ColBase 国立博物館所蔵品統合検索システム

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