韓信

韓信（かん しん）

韓信は、中国の秦末から前[[漢]]初期にかけて活躍した武将で、劉邦（りゅうほう）の配下として数々の戦いで勝利を収め、漢王朝の建国に大きく貢献しました。張良（ちょうりょう）、蕭何（しょうか）とともに「漢の三傑」と称されるほどの功績を残しましたが、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯

生い立ち

韓信は、淮陰（わいいん、現在の江蘇省淮安市淮陰区）の出身です。若い頃は貧しく、定職にも就かずに放浪生活を送っていました。他人の家に居候しては食事にありつけず、見かねた老女に食事を恵まれるという日々でした。また、町では若者に「臆病者」とからかわれ、股をくぐる屈辱を味わうなど、周囲からは見下される存在でした。この出来事は「韓信の股くぐり」として知られています。しかし、韓信は「恥は一時、志は一生」と冷静に判断していたと言われています。

項羽の配下から劉邦の配下へ

秦の始皇帝が亡くなると各地で反乱が起こり、韓信は項梁（こうりょう）、次いで項羽（こうう）に仕えましたが、自身の進言が受け入れられることはありませんでした。その後、項羽の下を離れて漢王・劉邦の元へ移ります。しかし、そこでも当初は重要な役職を与えられず、不遇の日々を送ります。ある時、罪を犯して処刑されそうになったところを、夏侯嬰（かこうえい）という人物に助けられ、劉邦に推薦されます。劉邦は韓信を治粟都尉（ちぞくとつい）に任命しますが、特に関心を示しませんでした。しかし、蕭何は韓信の才能を見抜き、劉邦に何度も推薦します。最終的に、劉邦は蕭何の強い推薦を受け入れ、韓信を大将軍に任命し、全軍の指揮を委ねます。

躍進

大将軍となった韓信は、劉邦に天下を奪うための戦略を献策します。その卓越した戦略眼と軍事力で、各地の戦いで勝利を重ねていきます。魏（ぎ）を滅ぼし、代（だい）、趙（ちょう）を占領するなど、破竹の勢いで領土を拡大します。特に、趙との戦いでは「背水の陣」を敷き、不利な状況を覆して勝利を収めました。さらに、燕（えん）を降伏させ、劉邦を支援します。

斉の平定と斉王就任

劉邦が項羽との戦いで苦戦する中、韓信は斉（せい）の平定を命じられます。しかし、劉邦は斉との和議を結び、韓信に兵を引かせようとします。韓信は弁士の蒯通（かいつう）の進言を受け、斉への攻撃を強行。斉を平定し、斉王に封じられます。これにより、韓信は西楚、漢と並ぶ一大勢力となり、天下三分の計も唱えられました。

楚漢戦争の終結

韓信は、劉邦が項羽と決戦を行うと、最終的に参戦し、垓下（がいか）の戦いで項羽を打ち破り、楚漢戦争を終結させました。この功績により、劉邦から楚王に封じられます。

転落

楚王となった韓信は、かつて自分を助けてくれた人々や、自分を侮辱した人々を呼び出し、それぞれに報いました。しかし、劉邦は韓信の存在を警戒するようになります。韓信は、劉邦の旧友を匿ったことを理由に謀反の疑いをかけられ、淮陰侯に降格されます。その後、陳豨（ちんき）の反乱計画に加担したことが発覚し、呂后（りょこう）によって処刑されます。

評価

韓信は、その卓越した軍事力と知略で、劉邦の天下統一に大きく貢献しました。しかし、その後の傲慢な態度や、劉邦への不信感から、最後は悲劇的な結末を迎えてしまいます。

司馬遷は「韓信は、もし謙虚さを忘れずにいれば、周公・召公・太公望に匹敵するほどの功績を残し、後世まで名を残しただろう。しかし、天下が定まってから反逆を企てたため、一族が滅ぼされたのは当然である」と評価しています。

韓信を題材とした作品

韓信の生涯は、多くのドラマや映画で描かれています。

中国のテレビドラマ『項羽と劉邦・背水の陣』(1991年)
中国映画『項羽と劉邦 鴻門の会』(2012年)

その他

台湾では、韓信が麻雀とサイコロの発明者であるという説があり、「賭博の神」として崇められています。

また、明代の書物には、韓信の息子が蕭何に匿われ、南越に逃れたという話があります。

桃屋の搾菜のCMで「韓信の股くぐり」がネタに使われています。



この文章は、史実に基づいて韓信の生涯をまとめたものです。物語性を持たせるために、一部脚色している部分もありますのでご了承ください。

参考資料:

* 司馬遷『史記』巻92淮陰侯列伝

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