音楽 (2020年の映画)

映画『音楽』(2020) - 音に目覚める不良たちの青春

『音楽』は、大橋裕之の漫画『音楽と漫画』『音楽 完全版』を原作とした、岩井澤健治監督による日本のアニメーション映画です。監督自らが脚本、絵コンテ、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督、編集を手掛け、7年以上の歳月と4万枚を超える手描き作画によって制作されました。2020年1月11日に劇場公開され、その独創的な映像表現と音楽で話題を呼びました。

制作の背景

岩井澤健治監督は、本作の制作に7年以上の歳月を費やし、ほぼ一人で4万枚に及ぶ作画を完成させました。アニメーション制作には、実写映像をトレースするロトスコープの手法が用いられ、特にクライマックスの野外ライブシーンでは、実際にステージを設営し、ミュージシャンや観客を動員して撮影が行われました。また、声優には、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎や岡村靖幸など、音楽家が起用されている点も特徴です。

ストーリー

物語の主人公は、不良高校生の研二。彼は、太田、朝倉という仲間と、目的もなく日々を過ごしていました。ある日、ひったくり犯を追いかけるバンドマンから預かったベースギターを勝手に持ち帰ったことがきっかけで、3人は勢いでバンドを結成することになります。ベースギター2本と、シンバルのないドラム2つという、奇妙な編成のバンド「古武術」は、初めて音を奏でたとき、3人に衝撃を与えます。以来、彼らは音楽に夢中になっていきます。

一方、不良グループのリーダーである大場は、研二を懲らしめようと画策します。研二は、大場からの伝言を亜弥から伝えられますが、音楽に夢中で全く興味を示しません。亜弥に演奏を聴かせた後、バンド名を聞かれ、朝倉の思いつきから「古武術」というバンド名が決まります。その後、同じ学校に「古美術」というバンドがあることを知った研二は、彼らの音楽に興味を持ち、交流を深めます。そして、2つのバンドは、地元の音楽フェスに参加することになるのです。

フェス当日、研二は会場に現れません。しかし、亜弥は「きっと来る」と太田と朝倉を励まします。その頃、研二は、大場に待ち伏せされ、ギターを壊すか、ボコボコにされるかの選択を迫られていました。研二は迷わずギターを叩き壊し、隠し持っていたリコーダーを手に、フェス会場へ向かいます。会場では、「古美術」が演奏を始めますが、途中でギターの弦が切れるというアクシデントが発生します。続いて「古武術」の出番となり、研二がリコーダーを吹きながら登場し、3人での演奏が始まります。大場ら不良グループも乱入を試みますが、音楽に圧倒され、いつの間にか演奏に聴き入ってしまいます。さらに、「古美術」のメンバーも加わり、演奏は熱狂を帯びていきます。演奏後、研二はリコーダーを地面に叩きつけ、号泣しながら熱唱します。

登場人物

研二: 本作の主人公。不良高校生。坂本慎太郎が声優を務めます。
亜弥: 研二の同級生。駒井蓮が声優を務めます。
太田: 研二の仲間。前野朋哉が声優を務めます。
朝倉: 研二の仲間。芹澤興人が声優を務めます。
森田: フォークソング部に所属する「古美術」のメンバー。平岩紙が声優を務めます。
大場: 不良グループのリーダー。竹中直人が声優を務めます。

評価と受賞

『音楽』は、その独創的な映像と音楽が高く評価され、第43回オタワ国際アニメーションフェスティバルでグランプリを受賞したほか、第75回毎日映画コンクール大藤信郎賞、第24回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞など、数々の賞を受賞しました。

まとめ

映画『音楽』は、音楽の持つ力、仲間との絆、そして青春の衝動を描いた、他に類を見ないアニメーション作品です。手描きアニメーションならではの温かみのある映像と、個性的なキャラクターたちが織りなす物語は、観る人の心に深く響くことでしょう。

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