音楽療法

音楽療法の概要

音楽療法は、音楽を聴いたり、演奏したりすることによって得られる生理的、心理的、社会的な効果を活用し、心身の健康の回復や向上を図る代替医療や補完医療の一つです。これには、自ら演奏や歌唱を行う能動的音楽療法と、音楽を聴くことを中心とした受動的音楽療法の二つのスタイルが存在します。

バリー・キャシレスは『代替医療ガイドブック』の中で、音楽療法は有効性が立証された補完療法であり、多くの健康問題に対して効果を上げていると述べています。音楽療法は直ちに治癒する力を持たないものの、幸せや生活の質を向上させ、症状を軽減し、リハビリテーションをサポートする手段として広く利用されています。

音楽療法の歴史

創成期

音楽は、原始宗教や自然崇拝と同時に誕生し、儀式や呪術において使用されました。これにより人々は精神を高揚させたり、トランス状態に入ったりすることができました。ユダヤ教やキリスト教の賛美歌も音楽の重要な役割を強調しており、信仰心を深める手助けとなっています。音楽の治療的効果も古くから知られており、旧約聖書ではダビデが竪琴でサウル王のうつ病を癒したという記述があります。

また、古代ローマの著述家アテナイオスは、音楽が感情の乱れを和らげ、意見の対立を解消する役割を果たすと記しました。これらの初期の記録が、音楽が持つヒーリングの力を示しています。

発展期

第二次世界大戦中、アメリカ合衆国は多くの負傷者を抱え、野戦病院で音楽を流したり演奏したりする試みを行いました。これによって、兵士たちの癒しが早まったことが報告されています。その後、アメリカを中心に、音楽を介した治療効果が科学的に立証されていくことになりました。

現在の音楽療法

現在、音楽療法は高齢者のケアや引きこもりの子どもたちのサポートなど、多岐にわたる現場で活発に行われています。岐阜県音楽療法研究所の設立を契機に、各地の自治体や大学でも研修プログラムや研究機関が設置されています。奈良市や岐阜県、兵庫県では独自に認定した音楽療法士の資格も発行されています。

特に日本音楽療法学会が認定する音楽療法士（Music Therapist）の資格が主流です。この学会では、脳卒中患者向けのリハビリに和太鼓を利用し、感覚受容器の回復が報告されています。

対象となる人々

音楽療法は様々な人々のニーズに応じた療法であり、高齢者や発達障害を持つ方、身体に障害のある方、学校に通えない子ども、幼児、薬物依存者、高次脳機能に障害を持つ方に対して有効とされています。

音楽療法は、医療の枠を超えた幅広い応用が期待されており、今後もその効果に関する研究が進むことで、さらに多くの人々に貢献できるでしょう。

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