須藤しげる

須藤しげるの生涯と芸術

須藤しげる（すどう しげる）は、1898年9月17日に愛知県豊田市（当時は挙母町）で生まれました。本名は須藤源重で、彼は主にその名でも多くの作品を発表しました。彼は大正から昭和にかけて、イラストレーターとして気鋭を発揮し、雑誌や絵本に数多くの挿絵を描きました。その独特なスタイルと情緒豊かな作品群から、抒情画家としての名声を確立しました。

幼少期と上京

しげるの家業は代々麩屋を営む商家で、彼の幼少期は大人しい性格で過ごしました。子供の頃は友達とともに矢作川に釣りに出たり、帆船を見に行くなどの穏やかな日常を楽しんでいました。残念ながら、彼の少年時代を語る資料は少なく、その周囲の人々もほとんど現存していません。彼が20歳の時に描いた油絵は、今も挙母小学校に展示されています。

14歳の頃、彼は上京し、岸田劉生に出会い、その技術を学びました。当初は油絵に情熱を注ぎ、特に「須藤光子像画」（1935年作）では、劉生の影響を受けた鮮烈な赤色が目を引きます。しかし、油絵の制作には費用がかかるため、彼は10代後半から日本画に転向しました。1916年には著名な画家、中村岳陵に師事し、その後もしばらくは物質的な困難に直面しながら、雑誌の挿絵を描くことで生計を立てました。

叙情画家としての成長

須藤しげるは、竹久夢二の影響を受けながらも独自の絵の世界を築きました。彼は、少女雑誌「少女倶楽部」や「少女の友」、さらに「少年倶楽部」や「令女界」などで作品を発表し、人気の高まります。特に西條八十の「天使の翼」や吉屋信子の「花物語」などの連載において、多くの雑誌イラストを手がけて脚光を浴びました。

彼の考える叙情画は、「画家の感情を絵で表現したもの」とし、物語や詩の内容をただ説明する挿絵とは異なると述べています。彼は「線」の重要性を説き、線こそが抒情画の最も必要な要素であり、感受性の敏感さが抒情画家の命だと語っていました。須藤は自身を「画家」として通す姿勢を貫き、生涯にわたる情熱を持ち続けました。

最期と日記

1946年2月3日、須藤しげるは48歳でこの世を去りました。彼が亡くなる数年前に記した日記には、病気による苦悩や死への恐怖が表れており、「死ぬのはいやだ」「生きるのだ」といった切実な願いが書かれています。最終的には「自分は絵かきである生き方を少しづつすすめたい」と綴り、彼のアーティストとしての心意気を感じさせます。彼は叙情画のみならず、油絵、日本画、デッサンなど多様なジャンルで作品を生み出し、芸術の存在を豊かに刻みました。

主な作品

• - 『須藤しげる抒情画集』（国書刊行会、1985年）
• - 油彩『かこ川風景』（1919年） - けやきの会 編集
• - 油彩『板倉与五郎氏』（1931年） - けやきの会 編集
• - 油彩『川』（1919年） - けやきの会 編集

須藤しげるの作品は、現在も弥生美術館などに所蔵され、その影響力は後世に引き継がれていくことでしょう。

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