預 (刑罰)

「預」とは

「預」は武家法における、未決勾留や刑罰の一形態であり、特定の親族や私人の管理下で拘禁されることを指します。この制度は中世から近世にかけて用いられ、主に身分制度や拘禁施設の不備などが背景にありました。

概要

中世・近世の日本では、拘禁施設が不足していたため、身分が高い者、すなわち公家や武士、僧侶を有力な御家人の下にこの「預」によって拘禁することが行われていました。この方法は、鎌倉幕府の時代から武家社会の慣習として定着していったのです。

江戸時代に入ると、江戸幕府の司法制度として、社会の様々な層に対して「預」が行われるようになりました。ただし、無宿者については基本的に牢獄での拘禁が適用されました。

武士に関しては、原則として500石以上、大名家に預けられることが普通でした。また、国事犯や大名への処罰の場合にも預けられることが行われ、これが単なる預とは異なり、終身赦免が無い「永預」とされることもありました。さらに、預けられた家から別の家へと預替えが行われることもありました。

庶民における「預」

庶民に関しては、軽微な罪を犯した者には、できる限り拘禁を避け、「預」によって代替する方針が取られました。このような罪人は手鎖をかけられ、都市では「宿預」（町預）、地方では「村預」として取り扱われました。

「宿預」は公事宿や居住する町の町役人、五人組に預けられ、一方「村預」は村の役人や親類に預けられました。こうした預となった者は、自宅か特定の施設で一定期間の謹慎や蟄居を命じられました。

逃亡時の対応

『公事方御定書』によれば、未決勾留中に預けられた者が逃亡した場合には、本来の刑罰よりも重い処罰が科せられました。また、「預」を行った人や団体には捜索の義務が課せられ、逃げた者を見つけ出せなかった場合には罰金などのペナルティを受けました。手鎖を外した場合も、罰として「手鎖100日」という処罰が課せられることもありましたが、予想される刑罰が軽微な場合には手鎖が免除されることもありました。

特殊なケース

さらに、15歳未満の幼年者や障害者に関しては、親族に預けられることがありました。未決中に重病にかかった無宿者や身寄りのない幼年者は、「溜預」と呼ばれる形で非人頭によって管理され、保護されることがありました。このように、「預」は中世から近世の日本社会において、さまざまな形で運用されてきた制度であったのです。

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