頚動脈小体

頚動脈小体について

頚動脈小体（けいどうみゃくしょうたい、英: carotid body）は、頚動脈の分岐点に見られる米粒大の末梢化学受容器です。この構造は、心臓の拍動や呼吸の調節に関与しており、呼吸や血中ガスの状態を監視しています。頚動脈小体は、酸素（O₂）や二酸化炭素（CO₂）の濃度を感知し、それによって呼吸中枢へ情報を送る役割を果たします。

頚動脈小体は、発生学的には神経上皮に起源を持つグロムス細胞で構成されています。これらの細胞は、タイプⅠとタイプⅡに分類されます。タイプⅠ細胞は神経細胞に似た受容体の役割を持ち、酸素や二酸化炭素、pHの変化に敏感に反応します。一方、タイプⅡ細胞はグリア細胞としての役割を果たしています。

機能とメカニズム

頚動脈小体は、特に低酸素状態に対して敏感です。酸素分圧が100Torrを下回ると、タイプⅠ細胞の活動が急激に増加し、神経伝達物質を分泌します。これにより呼吸に必要な神経刺激が生じ、呼吸中枢へと情報が伝達されます。この過程では、アセチルコリンやATP、ドーパミンといったさまざまな神経伝達物質が関与しています。

頚動脈小体から送られる信号は、通常は呼吸中枢のCO₂受容器に対して補助的な役割を担っています。このため、健康な状態ではあまり重要度が高くありませんが、慢性的な高二酸化炭素血症を持つ患者ではその重要性が増し、呼吸調整に影響を与えることがあります。

頚動脈小体の疾患

稀ですが、頚動脈小体には腫瘍が形成されることがあります。この中で最も一般的なのは傍神経節腫（パラガングリオーマ）と呼ばれる、良性の腫瘍です。これらの腫瘍はしばしば症状がないケースもありますが、時には頚部の腫れや圧迫感を引き起こすことがあります。

ガス検知のメカニズム

頚動脈小体のタイプⅠ細胞は、酸素分圧の低下、二酸化炭素分圧の上昇、またはpHの変化によって反応します。これにより、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し、神経伝達物質の放出が促進されます。特に酸素分圧が下がると、ミトコンドリアの機能に影響を及ぼしてカリウムチャンネルが抑制されます。これらのプロセスが複雑に絡み合い、呼吸や体内のガス環境を常に監視することによって、体が適切に反応することを可能にしています。

アシドーシスやアルカローシスといった状態では、細胞内の水素イオン濃度が変化し、これが頚動脈小体の反応に直接的な影響を与えることもあります。これにより、呼吸と血圧の調節が行われるのです。

このように、頚動脈小体は体の呼吸機能と血液中のガスバランスに欠かせない構造であり、その機能は人間の生命維持にとって極めて重要です。

もう一度検索