頼助 (仏師)

頼助（らいじょ）は、平安時代後期に活躍した奈良仏師であり、その足跡は日本の仏教美術史に深く刻まれています。天喜2年（1054年）に生まれ、元永2年6月9日（1119年7月18日）に没しました。彼は、仏師として名高い定朝の孫であり、覚助の実子、あるいは直系の弟子として、数多くの仏像制作に携わりました。

興福寺を中心とした活動

頼助は、興福寺を中心に奈良で主に活動したため、彼の系統は「御寺仏師」または「奈良仏師」と呼ばれるようになりました。この一派からは、後に鎌倉時代を代表する仏師となる運慶をはじめ、多くの優れた仏師が輩出されました。彼の作風や指導は、後の時代の仏像制作に大きな影響を与えたと考えられています。

主な経歴

康和5年（1103年）: 興福寺の落慶供養に際して、法橋に叙せられました。これは、彼の仏師としての技量と地位が公に認められたことを示しています。
天永元年（1110年）: 再び興福寺の諸像の修理を指導しました。地震などの災害で損傷した仏像の修復は、仏師にとって重要な仕事であり、その技術と知識が試される機会でした。
* 永久4年（1116年）: 興福寺と深い関係を持つ春日大社西塔の仏像を造立しました。寺院だけでなく、神社とも連携して仏像を制作することは、当時の仏教美術の広がりを示すものです。

常明について

頼助の子である常明は、金剛峯寺に所蔵されている「絹本著色両界曼荼羅図」（血曼荼羅）を描いたことで知られています。この曼荼羅図は、密教美術の重要な作品として評価されており、常明の芸術的な才能を示すものです。頼助の血筋は、仏像制作だけでなく、仏教絵画の分野にも影響を与えていたことが伺えます。

御寺仏師について

御寺仏師とは、1096年（永長元年）に発生した永長地震で被災した興福寺の諸像の復興と修理に当たった仏師たちを指します。この修理の際に、仏像に記銘されたことから、その存在が確認されました。頼助もこの御寺仏師の一人として、興福寺の復興に尽力しました。

内山永久寺との関係

内山永久寺は、興福寺と並ぶ奈良仏師の拠点でした。頼助の一派も、内山永久寺と連携して仏像制作を行ったと考えられます。奈良には多くの寺院が存在し、それぞれの寺院が仏師を抱えていたため、仏師たちは互いに技術を競い合い、交流を深めながら、仏教美術を発展させていきました。

白河法皇呪咀事件

1113年（永久元年）に発生した白河法皇呪咀事件では、興福寺の大衆が呪詛のために不空羂索観音の造像を頼助に依頼したのではないかという疑いがかけられました。しかし、頼助は無罪とされています。この事件は、当時の仏教界における権力闘争や、寺院間の対立を反映したものであり、頼助もその渦中に巻き込まれたと言えるでしょう。

善派・慶派への影響

奈良仏師の後裔である善派や慶派は、鎌倉時代以降の仏像制作において重要な役割を果たしました。これらの流派は、頼助の作風や技術を受け継ぎ、さらに発展させることで、日本の仏教美術の新たな時代を築きました。

弟子たち

勢増や仁増（勢増の弟子）といった弟子たちがいました。彼らは、頼助から直接指導を受け、その技術と精神を受け継ぎました。彼らの存在は、頼助の仏師としての活動が、単なる個人的なものではなく、後世に続く一派を形成するものであったことを示しています。

まとめ

頼助は、平安時代後期に興福寺を中心に活躍した奈良仏師であり、御寺仏師、奈良仏師と呼ばれる一派を形成し、運慶などの著名な仏師を輩出しました。彼の経歴や業績は、日本の仏教美術史において重要な位置を占めており、その影響は後世にまで及んでいます。参考文献として西村公朝の「運慶仏教彫刻の革命」が挙げられます。

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