題目立

題目立（だいもくたて）

奈良市上深川町の八柱神社に伝わる「題目立」は、民俗芸能の一つであり、1975年に重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。特に地域の文化と伝統を象徴する存在として、多くの人々に親しまれています。

概要

題目立は、八柱神社の祭りである宵宮祭に行われ、特に17歳の若者たちが中心となって演じられます。祭りは通常10月12日に行われ、舞台は神社の本殿と参籠所の中庭に仮設されます。演者たちは、特定の衣装を身にまとい、竹垣で囲まれた小さな舞台の上で、源平合戦にまつわる物語を独特のリズムと言葉で語り継いでいきます。このスタイルは、音楽や複雑な振り付けがないため非常に素朴でありながら、劇的な物語を強調するものとなっています。

歴史

題目立の起源は室町時代末期まで遡ると考えられています。1733年に残された台本には、1600年代初頭のものが読みづらくなったため、再度書き改められたことが記されています。また、英俊の『多聞院日記』など多くの古文書に題目立の記載が見られ、演芸の歴史的価値が評価されています。呼称の由来についてはいくつかの説がありますが、演者が名前を名乗り、その後物語を紡ぐ様子から名が付いたのではないかとも言われています。

行事の進行

10月12日、舞台の準備が行われ、午後7時半頃になると、若者たちは装束を整え舞台に向かいます。舞台は、竹柵で囲われ、真ん中に板敷が敷かれ、周囲は藁で整えられます。長老が先導し、ミチビキ歌を謡いながら若者たちもその調子に合わせます。演じられる曲目は「厳島」「大仏供養」「石橋山」の三つで、時代によって異なる配役のもとで語られます。特に「厳島」と「大仏供養」は年度ごとに交互に演じられ、氏神の造替時には特別ルールが設けられています。

曲ごとの演技は、個々の演者が独特の声の調子で物語を語るスタイルを特徴とし、各自の音域や節回しが異なるのが味わい深い点です。ストーリーの進行に伴って、場の雰囲気も徐々に高まります。物語の終盤には「イリクドン」という呼び出しが行われ、特別な舞、「フショ舞」が披露されます。この舞は、演者の一人が板敷の上で踊り、周囲の者たちが特定の歌を唱えるものです。この部分は物語の流れを一変させる強い印象を与え、参加者や観客に感動をもたらします。

最終的には「人句」と呼ばれる言葉を唱和し、祭りは奉納として成就します。長老の先導により、若者たちはゆっくりと舞台を去り、祭りを締めくくります。このように、題目立は地域の伝統を継承する大切な行事であり、若者たちの成長を見守る重要な文化的活動でもあります。

参考資料

• - 高橋秀雄・鹿谷勲 編『祭礼行事・奈良県』おうふう
• - 奈良新聞社 編『大和の神々』奈良新聞社
• - 田中眞人『奈良大和路の年中行事』淡交社

このように題目立は地域の人々の支えを受けながら、毎年行われ続けており、後世に伝えられるべき貴重な文化遺産であることを示しています。

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