顔継祖

顔継祖（がん けいそ）は、明末の動乱期を生きた官僚であり、軍人でもありました。字（あざな）は縄其（じょうき）、号は同蘭（どうらん）と称しました。彼の正確な生年は不明ですが、1639年に亡くなっています。本貫は漳州（しょうしゅう）です。

生涯

顔継祖は1619年（万暦47年）に進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。1627年（天啓7年）には工科給事中（こうかきゅうじちゅう）という役職に就いています。この役職は、工部の事務を監督する役割を持っていました。

1628年（崇禎元年）1月、彼は工部の冗員問題と、三殿叙功の濫発を批判しました。具体的には、200人あまりの余分な俸禄を削減するよう訴え、財政改革を提言しました。さらに、宦官の魏忠賢（ぎちゅうけん）の仲間であった李魯生（りろせい）と霍維華（かくいは）の罪状を告発し、腐敗した政治の浄化を目指しました。

当時の朝廷では、御史の袁弘勲（えんこうくん）が東閣大学士の劉鴻訓（りゅうこうくん）を弾劾し、錦衣衛の張道濬（ちょうどうしゅん）がそれに協力して劉鴻訓を攻撃していました。顔継祖は、袁弘勲と張道濬が朋党を組んで政治を混乱させていると批判しました。崇禎帝（すうてい）は、これらの訴えをいずれも受け入れ、政治の浄化に努めました。

その後、顔継祖は工科右給事中（こうかうきゅうじちゅう）に転じました。1630年（崇禎3年）には、北京城の16の城門の堀を巡視し、8つの問題点を指摘する上疏（じょうそ）を行いました。彼は、監督主事の方応明（ほうおうめい）の職務怠慢を弾劾し、崇禎帝は方応明を杖罰の上、退任させました。この頃、北京の外城壁が薄く、高さと厚さを増強する計画が持ち上がりましたが、財政難のため実現には至りませんでした。顔継祖は、吏科都給事中（りかときゅうじちゅう）に転じ、時事に関する十大弊害を上疏しました。その後、喪に服すため一時的に官を辞して帰郷しました。

1635年（崇禎8年）、顔継祖は再び官職に復帰しました。1636年（崇禎9年）7月には太常寺少卿（たいじょうじしょうけい）に抜擢され、11月には右僉都御史（うけんどうおし）となり、山東巡撫（さんとうじゅんぶ）として山東省の防衛を担いました。彼は兵を分けて国境を警備したため、河南の反乱軍は山東省に侵入することができませんでした。また、前任の巡撫である李懋芳（りぼうほう）が軍糧2万あまりを横領していたことを告発しました。

1638年（崇禎11年）、北京で戒厳令が発令されると、顔継祖は徳州（とくしゅう）への移駐を命じられました。彼の部隊は3000人ほどで、楊嗣昌（ようししょう）の指揮下に入りましたが、その後の50日間で3回も方針が変更されました。その後、彼は徳州の防備に専念するよう命じられましたが、その結果、済南（さいなん）の守備が手薄になってしまいました。顔継祖は劉沢清（りゅうたくせい）や倪寵（げいちょう）らにたびたび援軍を要請しましたが、彼らは動かず、事態は悪化しました。

1639年（崇禎12年）1月、清軍が済南を攻略し、徳王（とくおう）朱由枢（しゅゆうすう）が捕らえられました。顔継祖は、単独で広範囲をカバーすることはできず、責任を問われ弾劾を受けました。彼は官位を返上して帰郷することを願い出ましたが、崇禎帝はこれを許さず、彼は逮捕され投獄されました。同年8月癸巳（きし）の日、顔継祖は処刑されました。

顔継祖は、明朝末期の混乱期において、その職務を忠実に果たそうとした官僚の一人でした。彼は、不正を糾弾し、国防に尽力しましたが、時代の波に翻弄され、悲劇的な最期を遂げました。彼の生涯は、当時の明朝が抱えていた構造的な問題と、末期の混乱を象徴するものと言えるでしょう。

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