楊嗣昌

楊嗣昌（よう ししょう）

楊嗣昌は、1588年から1641年にかけて明朝末期に活躍した官僚です。字を文弱といい、湖南省武陵の出身でした。父は兵部右侍郎を務めた楊鶴であり、裕福な家庭に育ち、幼少の頃からその聡明さで将来を嘱望されていました。

生涯

1610年、科挙に合格し進士となったことで、官僚としてのキャリアをスタートさせました。当初は庶吉士として任官し、その後、杭州府教授、南京国子監博士、戸部郎中などの役職を歴任しました。彼は、権勢を誇った宦官の魏忠賢に媚びへつらうことなく、また、東林党とも私的な繋がりを持たなかったとされています。しかし、1623年には、党派争いに巻き込まれることを避けるため、病気を理由に辞職しました。

1628年、楊嗣昌は河南副使として政界に復帰し、右参政の地位を加えられました。崇禎帝の信任を得て、右僉都御史に任じられ、永平巡撫として地方行政を担うことになります。彼は、国内の反乱勢力である李自成らの農民軍を鎮圧することを、後金（後の清）に対する防衛戦略の前提とする「安内攘外」論を支持しました。そして、山海関を修復することで、後金の侵入を阻止しようとしました。

1634年、兵部右侍郎と右僉都御史に昇進し、宣府、大同、山西の軍務を総括する責任者となりました。1637年には兵部尚書にまで進み、張献忠を一時的に招撫することに成功しました。この功績により、崇禎帝を喜ばせ、翌年には礼部尚書と東閣大学士という高位に上り詰めました。しかし、この時、両親の喪中であったにも関わらず国政に関与したことが、黄道周から批判されました。しかし、崇禎帝は黄道周を処罰し、官位を6階級降格させました。

ところが、1639年に張献忠が再び反乱を起こすと、楊嗣昌は鎮圧のために奔走することになります。1641年1月には、李自成が洛陽を占領し、崇禎帝の叔父にあたる福王朱常洵が殺害されるという事態が発生しました。さらに2月には、張献忠が襄陽を攻撃し、襄王朱翊銘も殺害されました。これらの事態に対し、多くの官僚たちがその責任を楊嗣昌一人に押し付けようとしました。連日の激務と精神的な重圧に耐えられなくなった楊嗣昌は、過度のストレスから自ら命を絶ってしまいました。

参考資料

『崇禎長編』
『明史』列伝第一百四十
* 『明季北略』

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