顕仁皇后

顕仁皇后（けんじんこうごう）

顕仁皇后（けんじんこうごう、生年不詳 - 紹興29年9月庚子（1159年11月1日））は、北宋の徽宗皇帝の妃嬪であり、南宋の高宗皇帝の生母です。彼女は高宗の即位後、皇太后として尊ばれました。姓は韋氏（いし）。

生涯

韋氏は、韋安礼（いあんれい）の娘として生まれました。当初、宰相であった蘇頌（そしょう）の側女を務めていましたが、夜尿症が原因で蘇家を去ることになります。その後、端王（後の徽宗）の邸に入り、侍女として仕えました。そこで、侍女の喬氏（きょうし、後の貴妃）と姉妹の契りを結びます。喬氏は徽宗の寵愛を受け、多くの子を産んだ後、韋氏を徽宗に推薦しました。韋氏は平昌郡君（へいしょうぐんしゅ）に封じられ、趙構（ちょうこう、後の高宗）を産み、修容嬪（しゅうようひん）にまで昇格しました。しかし、徽宗の寵愛は長くは続かず、彼女は寂しい生活を送ることになります。

靖康元年（1126年）、金軍が侵攻すると、趙構は自らを使節（人質）として金に送るよう兄である欽宗（きんそう）に申し出ました。この申し出は欽宗を喜ばせ、その褒賞として、韋氏に龍徳宮賢妃（りゅうとくきゅうけんひ）の位が授けられました。

靖康の変（1127年）の際、高宗は都を離れていたため難を逃れましたが、韋氏は徽宗や欽宗らと共に金に連行されました。高宗が南宋を興して皇帝に即位すると、韋氏は宣和皇后（せんわこうごう）の尊号をもって遥かに尊ばれました。しかし、その翌月（金の天会5年（1127年）6月7日）、韋氏は柔福帝姫（じゅうふくていひ、高宗の異母妹）などの女性たちと共に洗衣院（せんいん）に下されるという屈辱を味わいます。韋氏は容姿が凡庸で高齢であったにもかかわらず、高宗に屈辱を与える目的から、多くの凌辱を受けました。その後、金の皇族である完顔宗賢（わんやんそうけん）の側室とされ、二人の男子を産みました。

南宋の紹興12年（金の皇統2年、1142年）、金と南宋の間に和議が成立し、韋氏は高宗の元へ帰還することができました。韋氏は皇太后として敬われ、富貴を享受し、高齢ながらも長命を保ちました。

紹興29年9月庚子（1159年11月1日）、韋氏は臨安（りんあん）の慈寧宮（じねいきゅう）にて80歳で崩御し、「顕仁」と諡（おくりな）されました。同年11月、徽宗の永佑陵（えいゆうりょう）に合葬されました。

逸話

晩年、韋太后は目を患い、視力を失いました。名医として知られる皇甫坦（こうほたん）の治療によって片目は持ちこたえましたが、もう片方は失明してしまいました。

『金史』海陵本紀（かいりょうほんき）によると、韋氏が高宗の元へ帰還する際、欽宗は彼女に拝み倒して、自身の帰還を金に依頼するよう懇願し、自身は道士にしてくれれば帝位は望まないとまで言ったとされています。韋氏は自身の目にかけてその誓いを立てましたが、帰還後、息子の帝位が揺らぐことを恐れ、その誓いを実行しませんでした。結局、欽宗は南宋に帰還することなく、東北の僻地である五国城（ごこくじょう、現在の黒竜江省ハルビン市依蘭県）で亡くなり、その末裔は紹興31年（1161年）7月に金の海陵王によって殺害されました。

脚注

伝記資料
『宋史』巻243 后妃伝下 韋賢妃伝
『靖康稗史箋證』
『三朝北盟会編』
* 『金史』

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