顕註密勘

顕註密勘について

『顕註密勘』は、鎌倉時代前期に著された藤原定家による『古今和歌集』の注釈書です。この書物は全3巻から成り、全体で8冊に分かれています。通称『古今秘註抄』とも呼ばれ、承久3年3月21日（西暦1221年4月15日）の日付が記されています。

背景

この注釈書はもともと、六条藤家の顕昭によって作成された『古今和歌集』の用語解説を基にしています。定家は、競い合う立場にあった御子左家の歌人であり、顕昭の解釈を秘かに手に入れ、春歌上巻を写し取って自らの見解を加えました。その中で、彼は俊成以来の御子左家の歌道に基づく解釈を「密勘」として発展させています。

顕昭と定家の考え方には共通点が多く見られますが、六条藤家が重視する考証主義と、御子左家が強調する芸術的な解釈の違いが明らかに反映されています。このため、定家の作品はそれぞれの家系の学問的背景を理解する上で貴重な資料となっています。

定家の意図とその流布

定家は、この注釈書の跋文において「返々も窓のほかに出され侍まじ」と記し、門外不出を願う意図を示しています。しかしながら、彼の意図とは裏腹に、書は広まり、江戸時代には公刊されるまでに至りました。このように、顕昭と定家の学説の違いを示す貴重な文献としての地位を確立しました。

発見と影響

これまでに確認されていた写本しか存在しなかった『顕註密勘』ですが、2024年4月に定家自身の筆による原本が発見される運びとなりました。この発見は、文学的及び歴史的に重要な価値を持ち、定家の歌論や彼が注目していた文学的解釈について新たな光を当てるものと期待されています。

参考文献

『顕註密勘』に関する研究や解説に関しては、多くの文献が存在します。例えば、村山修一の『藤原定家』（吉川弘文館）や、大津有一の「顕註密勘」（『国史大辞典 6』）などが挙げられます。また、赤瀬知子による「顕註密勘」（『日本史大事典 2』）も貴重な資料です。これらの文献を通じて、『顕註密勘』が持つ多面的な魅力や、藤原定家の業績についてより深く理解することができるでしょう。

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