風にうたえば (曲)

風にうたえば

尾崎豊の楽曲の中でも、その起源やリリース形態に独特の経緯を持つ「風にうたえば」は、1999年2月24日に通算16枚目のシングルとしてポリドール・レコードから世に送り出されました。これは1996年の前作から約3年ぶりのシングル発表であり、同年にリリースされた未発表曲集アレンジアルバム『風にうたえば』に先駆けて登場した作品です。オリコンチャートでは最高46位を記録しました。

楽曲の背景とタイトルの変遷

この楽曲の根源は、尾崎がデビュー以前に自宅でカセットテープに残していたプライベートな録音に遡ります。未発表音源として初めて公にされたのは、1995年発表のアルバム『4.25 REQUIEM』においてでした。その後、この曲は複数のアルバムに収められていますが、その際に「風にうたえば」と「果てしない旅」という二通りの主要なタイトルで表記されることになります。

例えば、1998年にリリースされた『7th Memorial 虹』や『14才の地図』には「果てしない旅」として収録されています。さらに遡ると、尾崎が中学生時代に所属していたバンド「ASAKADAN」では「風の旅」と呼ばれており、生前に書き留めたノートに残された詩には「風に歌って」というタイトルが見られます。同じ楽曲でありながら、そのタイトル表記は多岐にわたる複雑な様相を呈しています。

なお、このシングルを含め、ソニーミュージックレコーズ以外のレーベルから発表された尾崎の未発表音源については、彼の著作権者が関与していないとの理由から、ファンクラブやアイソトープといった一部の関係者からは「公式」な音源とは見なされていないという背景もあります。

音楽性と多様なアレンジ

シングル盤および同名アルバムに収録されたバージョンは、自宅録音された尾崎のボーカル音源を抽出し、服部克久氏による壮大なオーケストラアレンジが施されたものです。楽曲自体はフォークソングの趣きを持ち、ロードムービーを思わせる旅立ちの情景が描かれています。歌詞は、主人公が母親に置き手紙を残し、何かを見つけ出すためのあてのない旅に出るという内容です。

その後も、この曲は様々なアルバムで異なるアレンジが加えられています。例えば、2001年の『jewel -Vocal Version-』ではバンドサウンドに、2002年の『SEPIA』では西本明氏によるアレンジで収録されており、楽曲の多様な表情を楽しむことができます。

映画『大阪物語』主題歌として

1999年公開の市川準監督の映画『大阪物語』では、本作が主題歌として使用されました。これは、市川監督が尾崎の楽曲を使いたいと熱望し、所属事務所に直接交渉を行ったことで実現したものです。映画の中でこの曲は、ヒロインを演じる池脇千鶴が父親である沢田研二を探す場面や、父親と愛人の間に生まれた幼子を抱くラストシーンといった、物語の重要な局面を彩りました。同名アルバム『風にうたえば』には、映画で使用されたバージョンも収められています。

主な収録アルバム

「風にうたえば」または「果てしない旅」として、以下のアルバムに収録されています。

『4.25 REQUIEM』（1995年）：原点のデモテープバージョンを収録。
『7th Memorial 虹』（1998年）：『果てしない旅』として収録。
『14才の地図』（1998年）：『果てしない旅』として収録。
『風にうたえば』（1999年）：服部克久氏によるオーケストラアレンジバージョンを収録。
『jewel -Vocal Version-』（2001年）：バンドサウンドアレンジバージョンを収録。
『SEPIA』（2002年）：西本明氏によるアレンジバージョンを、『果てしない旅』として収録。

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