風光る (渡辺多恵子の漫画)

風光る

『風光る』は、渡辺多恵子による日本の漫画作品で、小学館の『別冊少女コミック』から連載が開始され、後に『月刊フラワーズ』へと掲載誌を移し、2020年7月号まで長期連載されました。本作は、幕末の動乱期を背景に、新選組をテーマにした青春グラフィティとして描かれています。

あらすじ

物語は、幕末の京都で、壬生浪士組（後の新選組）に入隊を志願した神谷清三郎から始まります。しかし、彼は男装した少女、富永セイでした。セイは、父と兄と共に診療所を営んでいましたが、長州の反幕派浪人によって診療所は焼き討ちに遭い、父と兄は命を落とします。セイ自身も火傷を負いますが、偶然居合わせた沖田総司に助けられます。兄の遺志を継ぎ、父と兄の仇を討つため、女性であることを隠して壬生浪士組に入隊します。当時は女性による仇討ちが認められなかったため、性別を偽る必要があったのです。

主要登場人物

神谷清三郎 / 富永セイ（かみやせいざぶろう / とみながセイ）

本作の主人公。初登場時は15歳、物語終盤では27歳となっています。男装して新選組に入隊しますが、その正体は女性です。家族を長州の反幕派浪士に殺害された過去を持ち、仇討ちのために剣を取ります。後に、沖田総司に恋心を抱き、彼の側で共に戦うことを願うようになります。剣の腕前は高く、独自の剣術を編み出しています。普段は優しく思いやりのある性格ですが、負けず嫌いな一面も持っています。物語が進むにつれて、女性としての成長も描かれています。最終的には、沖田総司の妻として、最期を看取ります。また、土方歳三との間に子供を授かります。

沖田総司

もう一人の主人公。新選組一番隊組長で、セイの世話役兼直属の上司です。甘いものが好きで、普段は明るく天然な性格ですが、剣の腕は隊内でもトップクラスです。セイに恋心を抱き、彼女を大切に思っています。物語の中盤で結核を患い、療養生活を送ります。最後はセイに見守られながら息を引き取ります。

斎藤一

新選組三番隊組長で、監察官としての顔も持っています。セイを妹のように思い、彼女に密かに恋心を抱いています。冷静沈着で真面目な性格ですが、セイのことになると動揺する一面も。剣術の腕も非常に高く、沖田総司と並び称されるほどです。新選組を離れた後も、セイのことを気にかけ、見守っています。

近藤勇

新選組局長。隊士たちからは父親のように慕われています。温厚で寛大な性格ですが、時に大胆な決断を下すこともあります。総司のことを非常に可愛がっています。

土方歳三

新選組副長。鬼副長として恐れられていますが、隊士たちのことを深く思っています。厳格な性格ですが、根は優しく、面倒見が良いです。セイのことは、新選組の一員として大切に思っています。物語終盤では、セイと関係を持ち、彼女に子を宿させます。

その他の主要人物

芹沢鴨: 壬生浪士組局長。豪快で酒癖が悪い。後に粛清されます。
山南敬助: 新選組総長。博学で温厚な性格。セイが女性であることを知っている数少ない人物の一人。後に隊を脱走し、自害します。
永倉新八: 新選組二番隊組長。左之助と共に遊郭によく通っていました。維新後も生き残り、「新撰組顛末記」を著します。
井上源三郎: 新選組六番隊組長。試衛館からの同志の中で最年長です。
藤堂平助: 新選組八番隊組長。山南を慕っています。後に暗殺されます。
原田左之助: 新選組十番隊組長。女好きで、遊郭によく通っていました。上野で戦死したと伝えられています。
伊東甲子太郎: 新選組参謀。勤王思想を持ち、御陵衛士を結成し新選組から離脱します。後に暗殺されます。

新選組を支えた人々

里: 花街の女性。セイの恋人役かつ姉のような存在。山南とは恋仲でした。
松本良順: 幕府典医で、新選組の主治医。セイを実の娘のように可愛がっています。
南部精一郎: 会津侯典医で、新選組の主治医。良順を尊敬しています。
坂本龍馬: 尊攘派の中心人物。温厚でドジな性格。
一橋慶喜: 禁裏守衛総督。後に15代将軍に就任。
徳川家茂: 14代将軍。人柄が良く、家臣から慕われています。
深雪&孝: 大阪の遊郭の売れっ子太夫。後に近藤勇に身請けされます。
富永玄庵: セイと祐馬の父親。蘭医で、尊皇攘夷派の浪士に殺害されます。
富永祐馬: セイの兄。佐幕思想が強く、父と共に殺害されます。
富永誠: セイの息子。父親は土方歳三だが、顔は総司にそっくり。
キン: 花街の女性で、総司に恋心を抱いていました。後に結核で亡くなります。
サエ: 総司に求婚した過去を持つ女性。男勝りな性格です。
正一: セイより年下の少年。里と暮らしています。

ドラマCD

2001年には、ドラマCDも発売されました。キャストには、演劇集団キャラメルボックスのメンバーが多く起用されています。

書誌情報

単行本は、全45巻が小学館から刊行されています。また、文庫版も刊行されており、気軽に物語を楽しむことができます。