試衛館

試衛館とは

試衛館は、江戸時代末期、現在の東京都新宿区市谷柳町付近にあった天然理心流の剣術道場です。この道場は、後に新選組の中核となる多くの剣士たちが集い、その武術を磨いた場所として知られています。

歴史

試衛館は、天保10年（1839年）に天然理心流3代目である近藤周助によって創設されました。周助は、近藤勇の養父でもあります。文久元年（1861年）には、4代目を近藤勇が継承しますが、勇が京都へ上洛したため、佐藤彦五郎と幕臣の寺尾安次郎が留守を預かり、慶応3年（1867年）まで存続しました。

この道場には、土方歳三、沖田総司、井上源三郎、山南敬助といった新選組の主要メンバーが門弟として集まっていました。また、永倉新八、原田左之助、藤堂平助、斎藤一といった食客も出入りしていたとされています。ただし、斎藤一については史料に不明な点があり、確証には至っていません。

名称について

「試衛館」という名称は、小島鹿之助が記した『両雄士伝』の注釈に「構場（号試衛）」とあるのが唯一の根拠であり、江戸時代の史料には「試衛館」という名称が記述されたものは確認されていません。新選組の隊旗が「誠」であったことから、「誠衛館」の誤りではないかという説もあります。また、大石学の研究によれば、史料には「試衛場」という名称しか確認できないとされています。

場所をめぐる問題

試衛館の所在地は、江戸市谷甲良屋敷（現在の東京都新宿区市谷柳町25番地）とされています。ここは、作事奉行配下の甲良氏の所領であり、近藤家の住居も兼ねていました。万延元年（1860年）には、同所で神道無念流の道場である練兵館との交流試合が行われた記録も残っています。

市谷甲良屋敷は、甲良氏が町人に貸し出す商店街であり、その一角に試衛館がありました。山田屋権兵衛の蔵の裏手に試衛館があったと、山田屋の子孫である田畑家では言い伝えられています。

一説には、試衛館は現在の市谷甲良町1番地にあったともされていますが、同地は文政年間から明治10年代まで医師の吉野元順が開いていた「回春塾」という医塾の場所でした。そのため、試衛館の正確な位置については、いまだに議論が続いています。

平成16年（2004年）3月には、新宿区教育委員会が「市谷甲良屋敷＝市谷柳町25番地」という説に基づき、25番地内に記念碑を建立しました。しかし、25番地内の詳細な位置については、今後の研究課題とされています。

試衛館を舞台にした作品

試衛館は、多くの小説や漫画の舞台にもなっています。

小説
松本匡代著『新選組 試衛館の青春』：土方歳三、沖田総司、斎藤一ら若き日の隊士たちの青春群像を描いた短編集です。

漫画
和田慎二著『あさぎ色の伝説』：新選組を題材とした作品で、京都へ旅立つまでの試衛館時代のエピソードが中心となっています。

参考文献

『月刊剣道日本』1978年9月号 特集天然理心流と近藤勇、スキージャーナル
永倉新八『浪士文久報国記事』中経出版、2013年

関連項目

撥雲館

外部リンク

試衛館 - 現在「試衛館」を名乗る天然理心流の道場
* 市谷柳町試衛館 - 「試衛館」を名乗る新撰組及び地元史の研究愛好家の団体

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