稲核

長野県松本市安曇の集落、稲核

稲核（いねこき）は、長野県松本市安曇地区に位置する集落の一つです。1874年（明治7年）に安曇村が発足した際、構成された4つの村の一つでした。集落内を国道158号が走り、松本方面から上高地、乗鞍高原、岐阜県方面へ向かう際の通過点となっています。

概要

安曇地区は、梓川が松本盆地に流れ込む手前から山奥まで広がる地域で、北アルプスの山々や上高地、乗鞍高原を含んでいます。稲核は、島々集落から4kmほど上流に位置し、梓川沿いの山腹に開けた平地にあります。かつては野麦街道の宿場町としての役割も担っていましたが、現在では国道を多くの観光客や物流が通過するものの、単なる通過点となっています。稲核ダムの建設により、水没や離村を余儀なくされた住民もいました。

旧野麦街道である国道158号と、その両側に並ぶ集落は、現在のダム水面よりも50～60m高い位置にあったため、水没を免れました。1960年代以前は「稲㧡」と表記されていたこともあります。また、近世の検地帳では、「手偏」の右側に「實」と書かれていました。この地域特産の野菜である稲核菜が住民によって栽培され、名産品となっています。2012年1月現在、世帯数は103、人口は247人です。国道158号沿いには、稲核郵便局があります。

交通の要衝としての歴史

稲核は、かつて物資輸送の中継地として重要な役割を果たしていました。上流には大野川や奈川の集落しかなく、島々までは4km離れていたため、宿泊する人もいました。大野川や奈川から炭などを運ぶ際、稲核まで運び、ここから運送業者に預けることが多かったのです。しかし、1922年（大正11年）に竜島発電所が建設され、奈川渡ダムが用水の取入口となると、資材運搬のために道路が大幅に改修されました。1924年に奈川渡発電所の工事が始まると、奈川渡まで自動車が通るようになり、大野川や奈川からの荷物は奈川渡まで下ろしてトラックに積み替えればよくなりました。これにより、物資輸送の中継地としての稲核の機能は失われ、宿場町としての役割も終えました。

現在、集落内の国道158号にはクランク状の箇所がありましたが、道路拡幅により、車両が減速せずに通行できるよう改修されています。

橋場という枝郷

近世には、稲核を本村とする枝郷「橋場」が存在しました。橋場は島々に近い場所にありましたが、稲核の枝郷とされていました。橋場は梓川の右岸に位置し、左岸との間には常時通行可能な雑炊橋が架かっていました。この橋は、現在の安曇野市・大町市方面と、松本市・塩尻市方面をいつでも確実につなぐことができる重要な橋でした。そのため、橋場は交通上の要衝となり、松本藩の番所が置かれ、旅人宿や牛宿も設けられました。また、橋場の男性の多くは、曲輪（がわ）杣の仕事に従事していました。曲輪杣は、良質な板材を曲物に加工する職人です。

しかし、1868年（明治2年）に下流に新淵橋という橋が架けられたことで、交通上の要衝としての地位を失い、集落の繁栄に終止符が打たれました。2012年1月現在、橋場の世帯数は19、人口は47人です。

教育

稲核には、松本市立安曇小中学校があります。1967年4月、村立稲核小・中学校と安曇小・中学校が統合され、新たに安曇小・中学校となりました。

アクセス

鉄道を利用する場合は、アルピコ交通上高地線新島々駅から路線バスで約15分です。

観光スポット

稲核周辺には、以下の観光スポットがあります。

道の駅風穴の里
稲核風穴

文献

以下は、稲核に関する文献です。

『安曇村誌　第3巻　歴史上』安曇村、1997年3月
『安曇村誌　第3巻　歴史下』安曇村、1998年3月

関連項目

稲核橋
雑炊橋
* 稲核ダム

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